乳幼児とアトピー第2回 赤ちゃんの離乳食 |
監修:角田和彦 かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長 1953年生まれ。 1979年、東北大学医学部卒業。専門は臨床環境医学・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイスときめ細かい診療を続けている。 著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『角田こども&アレルギークリニックのやさしいレシピ』、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)などがある。 |
- 離乳期は自分で食べて消化する準備期間理
- 前回は母乳の話をしましたが、母
乳やミルクには赤ちゃんの成長に
必要な栄養が備わっており、授乳期
はそれを飲むだけで事足りていまし
た。しかし、離乳後は、自分の力で
食べて栄養を摂っていかなければな
りません。離乳期は、そのために自
分の体でしっかりと栄養を消化吸
収できるようになるまでの準備期
間です。
母乳中に含まれる乳糖は、乳児の 体や脳を発達させるための重要なエ ネルギー源です。乳児は乳糖を消化 することができますが、成長につれ て乳糖分解酵素活性が弱まり、大人 になると乳糖を消化しにくくなりま す。つまり、乳児と大人では消化機 能の質が異なるのです。乳児の消化 機能は乳糖を分解する消化酵素が中 心ですが、大人になると乳糖よりも でんぷんを分解するための消化機能 が備わってきます。離乳期に大事な ことは、この消化機能の転換をうま く行うことなのです。
- 日本人の体質に合った理想の食をイメージしよう
- 離乳期に消化機能の転換を行うた
めに大切なこととは何でしょう?
ポイントは、将来の子どもたちに とって理想の食生活をイメージし、 その準備となる離乳食を考えること です。そのためにまず大切なのは、 安全な食品を選ぶこと。人体や環境 を汚染する化学物質、農薬や添加物 が残留した食品を避けることです。
もう一つ重要なことは、日本人の 遺伝子や体質に合った食習慣を守る こと。農耕民族である日本人は、古 来より穀類や野菜などを主食として きました。小魚や少量の鶏肉、いの しし肉などを食べていましたが、現 代のように肉食が普通になったのは 明治時代以降の話です。
ヨーロッパ地方は大昔から狩猟がさかんでしたが、これは寒冷な土地 で作物が育ちにくいという過酷な自 然環境で生きるための方策だったと いえます。西欧の人たちは、非常に 長い年月をかけて、牛乳から栄養を 摂取できる体質を獲得してきまし た。その長い歴史の中では、牛乳を 飲んで栄養を得ることができる遺伝 子をまだ持ち合わせていなかった時 代の子どもたちの多くが、自然淘汰 されていったものと考えられます。 日本に西欧の食文化が輸入され始 めてから、まだ百数十年ほど。こん な短期間で日本人の遺伝子が、西欧 の食に合ったものに変化するでしょ うか。近年増え続けているアレル ギーや成人病は、本来の日本人に合 わない食習慣が大きく影響している のです。
離乳食は、日本人の体質に合った 食習慣を目指し、赤ちゃんの消化能 力の成長に合わせて少しずつ進めて いきます。開始の時期には個人差が ありますが、生後6カ月頃を一つの 目安と考えます。なぜならば、この頃 から母乳中の鉄分が減り始めるか らです。これは「そろそろ自分で食べ て鉄分を補給する時期ですよ」とい う合図。野菜などを使った離乳食か ら鉄分を補給しないと、赤ちゃんの 鉄分は不足気味になります。このよ うに、離乳食を開始する時期にも、自 然の摂理に従った理由があります。