アトピー基礎講座 ステロイド剤の注意点 1 |
- ステロイドはアトピーを治さない
- 現在、病院で行うアトピー性皮膚炎の治療は、基本的に、日本皮膚科学会が作成した
「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」に沿って行われています。
ガイドラインでは、まず「治療の目標」として次の内容が掲げられています。
1.治療の目標
治療の目標は患者を次のような状態に到達させることにある。
⑴ 症状はない、あるいはあっても軽微であり、日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない。
⑵ 軽微ないし軽度の症状は持続するも、急性に悪化することはまれで悪化しても遷延することはない。
つまり、アトピー性皮膚炎という病気を「治す」のではなく、アトピー性皮膚炎の「症状」を治すことを目標としている、ということです。
実際、アトピー性皮膚炎という病気そのものを治していないことは、次の「薬物療法」の項目で述べています。
2.薬物療法
アトピー性皮膚炎は遺伝的素因も含んだ多病因性の疾患であり、疾患そのものを完治させうる薬物療法はない。よって対症療法を行うことが原則となる。
⑴ 炎症に対する外用療法
現時点において、アトピー性皮膚炎の炎症を十分に鎮静しうる薬剤で、その有効性と安全性が科学的に立証されている薬剤は、ステロイド外用薬とタクロリムス軟膏(Topical calcineurin inhibitor ;カルシニューリン阻害外用薬)である。 (以下、略)
- 薬でコントロールするか、生活でコントロールするか
- しかし、アトピー性皮膚炎の患者さんが「アトピーを治したい」と考えるのは当たり前で、
また実際に「アトピー性皮膚炎が治った」とする例は数多く実証されています。
もちろん、「アトピー性皮膚炎が治った」という状態は、いわゆる「寛解状態(症状が現れない状態で、 再発する可能性が全くないわけではない)」に過ぎないことは確かです。
病院の治療では、ステロイド剤などの薬物を用いて症状をコントロールした状態を「寛解状態」としています。一方あとぴナビでは、 薬物などを用いないで「生活の中でコントロール」できる状態を「寛解状態」と定義しています。
- 「副作用」というリスク
- では、なぜ薬物療法による「寛解状態」が問題なのでしょうか?
それは、医師側が患者側に示している薬物療法の「リスク」と、実際に患者側が受けている 「リスク」の状態が異なるからです。
ガイドラインでは、ステロイド剤やプロトピック軟膏の「有効性と安全性が科学的に立証されている」とあります。しかしながら、 現実に「使用する患者全てに安全性が立証されている」わけではないことは、ステロイド剤やプロトピック軟膏の長期連用による 副作用に悩んでいる患者さんにとっては明らかな事実でしょう。
とはいえ、ステロイド剤やプロトピック軟膏を「安全」に使用できているケースがあるのもまた事実です。
では、この「安全に使えたケース」と「安全 に使えなかったケース」には、どこに違いがあ るのでしょうか? 次回は、「ステロイド剤の使用における「安全」 とは、いったいどこにあるのか?」を考えてい きたいと思います。