アトピー基礎講座 ステロイド剤の注意点 2 |
- ステロイドでアトピーが治る?
- アトピー性皮膚炎の患者さんが、病院で処方されたステロイド剤を数日塗布して、
皮膚炎が治まった状態になったとします。その場合、ほとんどの患者さんは、「ステロイド剤でアトピー性皮膚炎が治った」という
「勘違い」をしてしまうでしょう。
なぜそれが「勘違い」なのか?を説明する前に、まず最初に、病気と症状の違いについて触れておきたいと思います。
一般的に、アトピー性皮膚炎とはどのような病気か?と尋ねられた場合、多くの人は「皮膚がかゆくなる病気」と答えると思います。
しかし厳密に言うならば、「かゆみ」とは症状であって病気により現れた「結果」に過ぎません。
ステロイド剤は、アトピー性皮膚炎によって生じた「炎症・かゆみ」という症状を治すことはできても、アトピー性皮膚炎という 病気そのものを治療することはできないのです。
- 解熱剤で風邪は治せない
- 風邪を例にとって考えてみましょう。風邪をひいて、高熱が出て、医師から解熱剤を処方され、それを服用して
熱が下がった場合、「解熱剤で風邪が治った」ということになるのでしょうか?
風邪という「病気」により、熱という「症状」が出たわけで、解熱剤はこの熱という症状を下げる(治す)だけで、風邪という病気そのものを 治しているわけでないことはお分かりいただけると思います。
もし、解熱剤だけを服用して風邪も治った場合でも、それは解熱剤が風邪を治したことにはなりません。解熱剤で熱を下げている間に、 自然治癒力で風邪を自らの体が治した、ということに過ぎません。
アトピー性皮膚炎も同様で、ステロイド剤により「炎症・かゆみ」という症状を抑えることは、間接的にアトピー性皮膚炎そのものを治す効果が あったとしても(夜、かゆみで眠れなかったのが寝られるようになり内分泌機能が正常化した、など)、ステロイド剤が直接アトピー性皮膚炎を 治してくれるわけではありません。
- 体を治すのは自然治癒力
- これは解熱剤の服用だけで風邪が治ったケースと同じです。ステロイド剤でアトピー性皮膚炎が治ったケースというのは、実は、アトピー性皮膚炎の原因が
軽微で初期の段階だったため、自然治癒しやすい状態であっただけなのです。
極端なことを言えば、ステロイド剤は治癒に至るまでの経過において炎症・かゆみを抑えただけであり、治癒に至る最も大きな要因は、 自分の体の自然治癒力にあるわけです。
このように症状が軽度な人は、ステロイド剤を使っても使わなくても、アトピー性皮膚炎を治癒できた可能性が高い、と考えられます。
したがって、ステロイド剤を安全に使用できるケースというのは、ステロイド剤がアトピー性皮膚炎を慢性化させる悪化要因になる前に使用を 中断できた場合です。その多くは初期症状で短期使用の場合、ということが言えるでしょう。なぜなら、ステロイド剤を長期間使用すればするほど、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因の一つになるからです。
もちろん、中にはステロイド剤そのものに対する感受性が低く、ステロイド剤が悪化要因となりづらい人もいて、そんな場合は、長期連用が可能な 場合も考えられます。しかし、多くの人はステロイド剤を長期間使い続けることで、いくつかの悪化要因を抱える可能性が高まります。
次回は、「アトピー性皮膚炎に対して、ステロイド剤がどのような悪化要因になるのか」を考えてみましょう。