アトピー基礎講座 ステロイド剤の注意点 3 |
- IgEがIgEを増やしている!?
- アトピー性皮膚炎の原因の一つとして、免疫機能の異常(過剰なアレルギー反応)が考えられますが、
これにはIgEというアレルギー反応を起こす抗体が関係しています。
アレルギー反応には、即時型と呼ばれるⅠ型、遅延型と呼ばれるⅣ型の二つがあります。アレルゲンが体内に入るとIgEがすぐに 反応を起こすのがⅠ型(即時型)。Ⅰ型では、アレルゲンが消失すれば反応も落ち着いてきます。
ところがⅣ型(遅延型)はもっと複雑です。IgEには「ガレクチン3」という受容体があり、この受容体はB細胞(IgEを作る細胞)と結合します。
健常な皮膚のB細胞は、表面にIgEが発現していないsIgE| (マイナス)B細胞(表面IgE陰性B細胞)なのですが、アトピー性皮膚炎の場合には、 B細胞の表面にIgE が発現しているsIgE+(プラス)B細胞(表面IgE陽性B細胞)が多いことが分かっています。
このsIgE+B細胞がガレクチン3の受容体を通してIgEと結合すると、さらに大量のIgEを作り出します。つまり「IgE がIgEを産みだす」 という悪循環が生じているわけです。
なぜアトピー性皮膚炎ではsIgE+B 細胞が多いのでしょう? その原因はIL-4(インターロイキン4)という細胞間のコミュニケーション機能を 果たすタンパク質因子にあります。
IL-4はB細胞をsIgE+B 細胞に分化させ、ガレクチン3の受容体の発現にも関わっていることがわかっています。
この循環する連鎖の輪が、遅延型のアトピー性皮膚炎の原因の一つになっています。
- ステロイド剤はIgEを増やしアトピーを悪化させている
- アレルゲンの侵入後にもIgEが連鎖的に増強されていく仕組みはとても複雑ですが、大元の原因はIL-4なので、
IL-4を増やさないことがアトピー対策として有効です。
IL-4 を増加させる要因には、睡眠不足、運動不足、栄養の偏り、化学物質の摂取などが考えられます。さらに、ステロイド剤などの免疫抑制剤がIL-4を増やすことも、 最近の研究でわかってきました。
ステロイド剤は、アトピー性皮膚炎の炎症(かゆみ)を抑える、つまりIgEの反応を抑える目的で使用されます。それなのに実際は、B細胞をIgEを生み出すsIgE+B細胞に 分化させる働きのあるIL-4を作り出してIgEを増やしているのです。
もちろん、この連鎖の輪はステロイド剤の短期使用で必ず起こるわけではありませんが、長期連用するほど、IL-4は増えていきます。
いったんIL-4によってsIgE+B 細胞が体内で大量に作り出されてしまうと、元のsIgE| B細胞に戻すことはできません。 sIgE+B細胞が「使われきるまで」の期間、IgEの増強が続き、炎症やかゆみといった症状が続くことになります。 ステロイド剤には、アトピー性皮膚炎を悪化させる要因、それも長期の慢性化にいたる最もやっかいな要因となる可能性があるのです。
次回は、ステロイド剤の、アトピー性皮膚炎の症状に関わる悪化要因について述べたいと思います。