アトピー基礎講座 ステロイド剤の注意点 4 |
- リバウンド症状の原因の一つは免疫力低下と感染症
- 長期連用していたステロイド剤を中断すると、「リバウンド症状」と呼ばれる症状悪化に陥ることがあります。
リバウンド症状が悪化すると、「皮膚が黒ずむ」「体液が流出して顔や体に貼りつく」「強いかゆみで不眠になる」「皮膚が固く厚くなる (皮膚のきめが粗くなる)」「食欲がなくなる」「倦怠感が強くなったりうつ状態に陥ることもある」といった症状が現れます。
リバウンド症状が起こる原因としては、「ステロイド剤の連用で副腎機能が低下し、自力でアトピー性皮膚炎を抑える力が極端に低下することで生じる」 とこれまで考えられてきました。
内分泌機能の低下やアトピー性皮膚炎の悪化自体が、リバウンド症状に関連していることは確かです。しかし、最近ではリバウンド症状に「感染症」が 深く関わっていることも分かってきました。
ステロイド剤がアトピー症状に効くのは、アレルギー(免疫反応)が引き起こしている炎症を、体が持つ免疫力を低下させることによって抑えるため。 しかし、ステロイド剤の免疫抑制作用は、アレルギーに関連する免疫(ヘルパーT細胞Ⅱ型:Th2)だけでなく、細菌やウイルスなどの外敵に対する免疫 (ヘルパーT細胞Ⅰ型:Th1)も同時に抑えてしまいます。
- 感染症にステロイドを使うと悪循環に
- 健全な皮膚には、善玉の常在菌が多く(表皮ぶどう球菌など)、これらが皮膚を覆うこと(フローラの形成)で
有害な菌の繁殖を防いでいます。しかし、かゆみで皮膚を掻き壊したりして皮膚のバリア機能が低下すると、ヘルペスや黄色ブドウ球菌、
真菌などの悪玉菌が増殖して感染症を起こします。実際、アトピー性皮膚炎の95%の患者が、何らかの感染症にかかった経験があることがわかっています。
これらの菌に対抗するには、体の免疫力が必要です。しかし、ステロイド剤を連用していると、ウイルスや細菌に対する免疫力も低下してしまいます。 免疫力が低下し、さらに掻き壊しで皮膚の防御機能(バリア機能など)も低下した状態が続けば、当然感染症にかかりやすくなります。
ステロイド剤を使い続ける限り、免疫力が低下した状態が続きます。ステロイド剤は感染症による炎症も一時的には抑えてくれますが、免疫力が低下した 状態では感染症をさらに悪化させる「下地」を育てているようなもの。だから、いったんステロイド剤を中断すると、感染症による炎症が抑えられなくなり 一気に拡大します。さらに、ステロイド剤は皮膚にある程度の期間貯留するため、免疫機能の回復には時間がかかります。
急激な皮膚の悪化は、このような要因が重なることで起こります。
ステロイド剤の分子量や、皮膚吸収後の内分泌系への影響の問題などから考えると、ステロイド軟膏によって急激な内分泌(副腎皮質ホルモン)機能の 低下が誰にでも起こる可能性は低いものと考えられます。したがって、リバウンド症状の悪化は、むしろ感染症による影響がかなり大きいと考えられます。
感染症を伴なうリバウンド症状では、感染症への防御力(免疫力)を低下させないことが大切なので、ステロイド剤の使用には慎重にならざるを得ません。 にもかかわらず、感染症により生じた炎症を抑える目的でステロイド剤が処方されることが多いのが現状です。これが慢性化したリバウンド症状に陥る 原因の一つと言えるでしょう。
次回は、ステロイド剤がアトピー性皮膚炎を治せないことによる弊害について考えてみたいと思います。