ステロイド剤と漢方薬の併用が離脱症状に与える影響 |
- 医学博士。臨床環境医。ホスメッククリニック院長。
アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー疾患、化学物質過敏症、電磁波過敏症、がんや糖尿病なのどの生活習慣病に対して、衣食住の生活環境改善を中心とした診療を行う。また全国で健康セミナーなどの講演活動や料理教室の講師など、幅広く活動している。著書に『アトピー性皮膚炎はこわくない』(三一書房)、『原発被ばくと医療被ばく』(花書院)などがある。
- 漢方薬にも副作用がある
- 漢方薬も結局は一時的な対症療法
ステロイド剤によるアトピー性皮膚炎の治療において、患者さんは薬剤による治癒効果を期待します。しかし、ステロイド剤にできることは、皮膚の炎症を抑えることだけです。ステロイド剤によってアトピー性皮膚炎の根本治療はできません。またステロイド剤には、炎症を抑えるという効果と同時にリスク(副作用)もあります。
これは、ステロイド剤に限ったことではなく、一般的に「副作用が少ない」と考えられている漢方薬の場合も同様です。「漢方薬は自然のものだから副作用がない」とか「漢方薬には四千年の歴史があり、副作用がないから、長年飲んでも安全」と信じている人が少なくないようです。しかし、漢方薬も薬である以上、必ず副作用があります。
薬による治療は、症状を一時的に抑える対症療法です。そして「薬は本質的に毒」なのです。トリカブトやフグの毒のように、天然で自然のものにも毒はあるのです。
漢方薬の処方はとても難しい
最近では、医師が漢方薬を使うことも多くなってきました。しかし、漢方薬を処方することは大変難しく、正しく処方出来る人は日本では少ないといわれています。漢方薬は、個々人の体質や症状から判断して処方されるものです。
これに対し、西洋医学は検査で得た病名で薬を処方することが多いのです。したがって、漢方薬を西洋医学的に病名から誰にでも画一的に処方すると、うまくいかない場合があっても無理はないといえるでしょう。
また、漢方薬の正しい処方は、患者さんが生まれてから今日までの病歴はもちろん、食生活などの生活歴、住んでいた場所、家族歴などを充分確認していかなければできないともいわれており、大変複雑なものなのです。
- 漢方薬の併用で離脱症状が長引くことも
西洋薬には多くの副作用があり、その症状も強く現れることが少なくありません。それに対して漢方薬は副作用の症状が弱く出る傾向にあります。
しかし、薬としての有害性を考えた場合、副作用の症状が強いものより、弱いものの方がその害が少ないかというと、そうとも言い切れません。
ステロイド軟膏を多く使っても漢方薬を使っていないアトピー性皮膚炎の患者さんが、ステロイド軟膏を止めた後は強い離脱症状がありますが、短期間で改善することがあります。
しかし、ステロイド軟膏を少ししか使っていなくても漢方薬を多く使ったアトピー性皮膚炎の患者さんが、ステロイド軟膏を止めた後は弱い離脱症状ですが、改善に長期間要することがあります。
このように、薬の有害性は副作用の症状の強弱だけでは判断できないことがあるのです。