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記事によれば、「乾燥した部位にワセリンを塗ったグループと比較した」、とありますが、ワセリンも強い保湿力と保護機能を有していますので、少なくとも乾燥したことによるマイナス点については、ワセリンを使用したグループも補えていたものと考えられます。しかし、実際には乳液状の保湿剤を全身に塗ったグループとの間で、発症率の差異が生じた、ということですので、ポイントは「乳液」と「ワセリン」の違いにあるのではないでしょうか?
ワセリンは、鉱物系(石油)から合成された油のため、水分を全く含みません。それに対して乳液状の保湿剤は、水分と油分を乳化させて作られており、多くの水分が含まれています。
つまり、ワセリンを使った場合、保湿と保護は行えても、保水が行えない状況だったと考えられます。
一方、乳液状の保湿剤の場合、保水と一定の保湿は行えますが、保湿力、保護力はワセリンには及びません。それにも関わらず、アトピー性皮膚炎の発症率が異なった、ということは、角質層に対する水分保持状態の差が、そこに現れているのではないでしょうか?
乾燥状態にワセリンだけ塗る、というスキンケアは「適切なスキンケア」とは言えません。 スキンケアの基本は、まず「保水」にあり、その「保水」を助けるために保湿があり、お肌のバリア機能を助けるために「保護」があります。
かゆみを知覚する神経線維は、角質層に水分が十分保たれた状態では、角質層の下、真皮内にとどまっていますが、角質層の水分量が減少、つまりお肌が乾燥した状態になると、その神経線維が角質層内に侵入してくることがわかっています(かゆみに敏感になる)。 また、乾燥したお肌は、異物の侵入を許しやすく、アレルゲンが角質層内に入り込んで炎症反応を生じさせることもあります。このように、お肌が乾燥することは、かゆみを生みやすい状況になるため、それを防止するために大切なのが、角質層へ十分な水分を与えること(保水)、そして与えた水分を保持させること(保湿)、バリア機能が低下している場合には補うこと(保護)の3つが必要になってきます。
特に、最初の「保水」が十分でなければ、いくら保湿と保護を行っても、角質層が潤わず、かゆみを知覚する神経繊維の問題は解消しません。
実際、アトピー性皮膚炎の方で、「間違ったスキンケア」を行っているケースで最も多いのが「保水」を行わずに「保湿」だけ行っているケースです。今回の「ワセリンだけ使用する」は、まさしくこのケースにあたり、もともと角質層が潤った状態の方は問題ありませんが、角質層が乾燥した状態の方にとって、水分を与えずに保湿だけ行うスキンケアそのものが誤っていると言えるでしょう。
今回の研究は、新生児のアトピー性皮膚炎発症率の差異に関するものですが、新生児に限らず、成人のアトピー性皮膚炎に対しても、同様のこと(適切なスキンケアを行うことでアトピー性皮膚炎の発症率が異なる)は十分に考えられます。
アトピー性皮膚炎には、適切なケアを行うことが大切でしょう。
(あとぴナビ 編集部)
