アトピーのプロアクティブ治療を考える |
- プロアクティブ治療と リアクティブ治療の違い
- アトピー性皮膚炎の治療法は、日本皮膚科学会
の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」により、
薬物療法が主な治療法として定められています。
そして現在の薬物療法は、症状が出たときに治療
する「リアクティブ治療」と、症状が出る前やいっ
たん症状が落ち着いた際に予防的に治療する「プ
ロアクティブ治療」の2種類に分けられています。
リアクティブ治療とは、症状が現れて病院に行っ
た際に治療を受けることを意味していますので、
従来の治療法と考えてよいでしょう。
対してプロアクティブ治療とは、リアクティブ 治療により症状が落ち着いてから、その後の再発 を防ぐために行われる治療で、最近の皮膚科にお いて主流になりつつある傾向が見られます。
- プロアクティブ治療とは?
- まず、プロアクティブ療法とは、どういった治
療法なのでしょうか?
最新の、日本皮膚科学会ガイドライン「アトピー
性皮膚炎診療ガイドライン2016年版」に記載
されていますので、その内容について見てみましょ
う。
「第1章」の「Ⅵ 治療」「3.薬物療法」「(1) 抗炎症外用薬」の項目内にある「c.プロアクティ ブ療法」についての記述です(下図)。
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- 簡単に言えば、症状が軽快した後でも、ステロ
イド剤やプロトピック軟膏を、少しずつ間隔を空
けながら塗布し続ける、という方法です。 九州大学のホームページ内にある「改定版 ア
トピー性皮膚炎についていっしょに考えましょう」 の「医師の視点で考えるアトピー性皮膚炎」の項目内「アトピー性皮膚炎におけるプロアクティブ
治療」では、より具体的な方法が書かれています。
- ◉ 症状が軽快したあとも、外用の頻度を
減らしながら治療を継続します
プロアクティブ治療で大事なことは、それまで 炎症があったすべての部位、つまり症状がなく なった部位にも塗るのが鉄則です。使用量です が、発疹は軽快しているわけですので、フィン ガーチップユニットの1/2量か1/3量で大丈 夫です。ですから、プロアクティブ治療では1 回 10 g 〜7gで全身を覆うようにします。あら かじめ保湿薬を全身に塗っておくと、少ない量 で全身にのばすことができます。このやり方で、 隔日外用、週2回外用、週1 回外用と減らしていきます。 ステロイド外用薬を塗らない 日はタクロリムス軟膏と保湿 剤を塗るという方法も効果的 です。タクロリムス軟膏がひ りひりしたりほてったりする 場合は、保湿剤だけの外用で も構いません。ステロイド外 用薬をたくさん塗っているよ うに感じるかもしれませんが、 週1回外用であれば全身で1 週間に 10 g 〜7gしか塗って いないことになり、しかもコ ントロールは良好ですので、 非常に効率のいいことがわか ると思います。個人差があり ますが、1回5g以下で全身 に薄く塗っても良好なコント ロールを維持している人もいます。このようにステロイド外用間隔を徐々に 開けていき、2週間に1回あるいは4週間に1 回だけ、ステロイド外用薬を全身に5g塗るだ けで良好にコントロールされている方もいます。
- ◉ プロアクティブ治療中にも再発はあります
プロアクティブ治療で重要なことは、ステロイ ド外用薬やタクロリムス軟膏を毎日外用して十 分に良くなった後も隔日外用し、再発がなけれ ば週2回外用、週1回外用と、ゆっくり減らし ていくことです。もちろん途中で再発(再増悪) は起こります。その時はまたフィンガーチップ ユニットの使用量で十分に毎日外用します。プ ロアクティブ治療中の再発はすぐにコントロー ルできますので、隔日外用、週2回の外用にす ぐに戻すことが可能です。なお、ステロイド外 用薬やタクロリムス軟膏を塗らない日でも、保 湿薬の外用は毎日継続します。
- と、書かれています。
今のところ、日本皮膚科学会では、このプロア クティブ治療によるリスクを大きく考えてはいな いようです。
しかし、これまで、ステロイド剤やプロトピック 軟膏の長期連用による弊害(副作用)を経験した ことのある方にとっては、皮膚の症状が落ち着い てもステロイド剤やプロトピック軟膏を使い続け ることに対する抵抗感が強いようです。
では、プロアクティブ治療のメリットとデメリッ トはどこにあるのでしょうか?