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プロトピック軟膏の、悪性リンパ腫に対する発ガン性が海外の論文で報告されました


  • あとぴナビでは、いろいろな専門医師の取材を行い、発ガン性の問題が指摘されていたプロトピック軟膏の問題を、過去に取り上げてきました。 しかし、現在の皮膚科医の見解は、局所的に使用する軟膏によるタクロリムス(プロトピック軟膏の成分)の使用は、その吸収度合いの問題から、発ガン性の危険はない、という状況でした。 その根拠として強く訴えていたのが、「プロトピック軟膏を使用した患者で、発ガンの事例はない」ということでしたが、2009年12月に、米国において大規模な、プロトピック軟膏の臨床データが検証され、T細胞リンパ腫(悪性リンパ腫)に対しては、プロトピック軟膏で発ガンのリスクが有意に上昇することが明らかにされたのです。 これは、アメリカのFDA(日本の厚生労働省にあたる政府機関)で勧告されました。
  • 局所タクロリムスあるいはピメクロリムス曝露と癌の関連
  • Rita L Hui, William Lide, James Chan, Joanne Schottinger, Monica Yoshinaga, and Mirta Millares
    背景:
    米国食品医薬品局(FDA; the Food and Drug Administration)は局所カルシニューリン阻害薬の発癌リスクに関して公衆衛生勧告を発表した。
    目的
    一般的な皮膚科疾患を有する患者における局所カルシニューリン阻害薬の曝露と非曝露による発癌リスクの比較。
    方法
    レトロスペクティブ・コホート観察的研究は2001年から2004年12月までアトピー性皮膚炎あるいは湿疹と診断された953,064の登録者を有する総合医療提供システムのデータを使用した。医療記録の閲覧は、局所カルシニューリン阻害薬に曝露された患者において癌診断を確認するために行われた。どの癌においても非曝露患者より少なくとも3倍以上の発癌リスクを有する場合に行われた。データの分析にはCox比例ハザードモデルが用いられた。
    結果:
    全ての発癌の年齢・性別補正ハザード比は、タクロリムス曝露患者vs.非曝露患者で0.93(95%信頼区間 0.81 to 1.07; p=0.306)、ピメクロリムス曝露患者vs.非曝露患者で1.15(95%信頼区間 0.99 to 1.31; p=0.054)であった。T細胞リンパ腫は、タクロリムス曝露(ハザード比=5.04, 95%信頼区間 2.39 to 10.63; p<0.001)およびピメクロリムス曝露(ハザード比=3.76, 95%信頼区間 1.71 to 8.28; p<0.010)によって有意に発現リスクが上昇した唯一の癌であった。T細胞リンパ腫を発現した薬剤曝露群の医療記録を閲覧することによって、16例のうち4例はタクロリムスあるいはピメクロリムス曝露以前にT細胞リンパ腫の初期病変が疑われる皮膚病変を有していたことが判明した。これらの4例を除外した後のT細胞リンパ腫における年齢・性別ハザード比は、タクロリムスで5.44(95%信頼区間 2.51-11.79; p<0.001)、ピメクロリムスで2.32(95%信頼区間 0.89-6.07; p=0.086)であった。メラノーマを含む他の癌のサブグループ解析では、統計学的に有意な発現リスクの上昇は認められなかった。
    結論:
    局所タクロリムスあるいはピメクロリムス曝露は総発癌率の上昇には関連しなかった。しかし、局所タクロリムスの使用はT細胞リンパ腫の発現リスクの上昇に関連した。


  • 今回の研究の対象者の内訳


  • タクロリムス暴露群(プロトピック軟膏使用者)の中でアトピー性皮膚炎患者の人数 9,174人


  • 曝露による発癌数と年齢・性別補正ハザード比


  • 2008年8月には、国内でのプロトピック軟膏の使用者の発ガンが疑われる事例が発生したことから、厚生労働省が「プロトピック軟膏を患者に処方する際には、発ガンのリスクがあることを患者に説明すること」という通達も出ておりますが、実際に、プロトピック軟膏の処方を受けている患者の方は、そのような説明を受けていないのが現状です。

    確かに、発ガンの状況は約1000人に1人という割合であり、発生する確率からいえば高いものではないかもしれません。 しかし、一度、悪性リンパ腫が発生してしまえば、生命に危険が生じることにもなるため、リスクの度合いとしては、決して軽視できるものではないでしょう。

    今後、これらの報告がどのように日本国内において、患者側に利益のある形で反映されていくのかは不明ですが、少なくとも、患者側は、こういった事実があることを、早めに知っておくべきではないでしょうか?


  • この記事は2010年1月15日のウイクリーマガジンで掲載しました。
    また2010年3月22日に産経新聞、日本経済新聞で以下の記事が新聞紙面に掲載されました。








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