乳幼児とアトピー第8回 なぜアレルギーになるの? |
監修:角田和彦 かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長 1953年生まれ。 1979年、東北大学医学部卒業。専門は臨床環境医学・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイスときめ細かい診療を続けている。 著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『角田こども&アレルギークリニックのやさしいレシピ』、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)などがある。 |
- そもそも、アレルギーはなぜ起きるのでしょう? これはなかなか本質的な問題で、少し難しそうです。しかし、アレルギーが発症する仕組みがわかると、何に気をつけたらよいのか、どんな生活を送ったらいいのかが、腑に落ちるようにわかってきます。
アレルギーが体の免疫機能と関係していることは、ご存知の方も多いでしょう。免疫機能とは、自分の体の外部にある有害なものを排除しようとする働きです。外部にある有害なものといえば、まず細菌やウイルスが思い浮かびます。これらが体内に侵入すると、健康がそこなわれてしまいます。ダニやカビ、環境ホルモン、化学物質などなど、アレルギー抗原などと呼ばれる物質もあります。また、他人の細胞を手術で移植しようとすれば、免疫力を抑制しないと体は拒否反応を示します。異物を排除するということは、自己と非自己とをみわけることでもあります。
- 免疫の仕組みは、生物の進化とともに変化してきました。下等な動物ほど、免疫の機能は簡単なものです。例えば、卵を外に産んで育てる動物は、体内に侵入してきた異物を免疫細胞が食べて退治したり、排除しようとします(細胞性免疫)。
しかし、哺乳動物の場合は、単純に敵をやっつけるだけの方法ではうまく行きません。なぜなら、哺乳類は母親の胎内で胎児を育てるからです。母胎内の胎児は、そのままでは母親の体にとって異物であると認識されます。遺伝子の半分は父親のものであるからです。もし、哺乳類が卵を産む動物と同じ免疫機能しか持たなかったら、胎児を排除してすぐに流産させようとするでしょう。
- そこで哺乳類は、新たな免疫機能を持つようになりました。新しい免疫機能は、いったん自分が敵だと認識した異物を記憶しておきます。そしてこの異物が再度体内に侵入しようとしたときに、体内に入ることを阻止して体を守ろうとします(液性免疫)。
母親は、自己の免疫から胎児を守るために、まず古くから持っている免疫機能(卵を産む動物たちも持っている細胞性免疫)を低下させます。さらに、胎児と母親の接触面である胎盤では、新しい免疫機能(抗体を作る液性免疫)を活発にすることで、古い免疫機能を抑えているのです。 このような複雑な仕組みに守られて、子どもはこの世に生まれてきます。生まれてきた子どもの免疫機能は、胎盤の接触面と同じで、古い免疫(細胞性免疫)よりも新しい免疫(液性免疫)の方が優位な状態です。その後子どもたちは、外部環境の様々なアレルゲンにさらされることで、古い免疫と新しい免疫のバランスを保ちながら免疫機能を発達させていきます。