乳幼児とアトピー第9回 衣替えの季節に気をつけたいこと |
監修:角田和彦 かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長 1953年生まれ。 1979年、東北大学医学部卒業。専門は臨床環境医学・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイスときめ細かい診療を続けている。 著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『角田こども&アレルギークリニックのやさしいレシピ』、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)などがある。 |
- アレルギー症状の出方は、赤ちゃん
の成長につれて変化する側面がありま
す。生後から1年間ぐらいは、腸管の免
疫が発達していく時期。赤ちゃんの食
生活は「授乳」から始まりますが、授乳
中は「乳に含まれた栄養を消化せずに
吸収」しています。そのせいで、この時
期は食物アレルギーを起こしやすくな
ります。
生後2〜3カ月は、アトピー性皮膚炎 を起こしやすい時期でもあります。最 初は赤いポツポツした湿疹が、顔から 胸、手足や背中などに広がります。症状 が進むと、皮膚が赤くはれたり、黄色い 滲出液が出て皮膚がジクジクとただれ たり、あるいは皮膚が乾燥してカサカ サとした粉を吹いたような状態になる 子もいます。1歳を過ぎる頃になると、断乳する ことで徐々に未消化のものを吸収しな いようになり、腸管の免疫が発達して くるので、体が栄養をうまく処理でき るようになります。
2〜3歳の頃になると、ひどかった アトピーや食物アレルギーは徐々にお さまり始める傾向があります。ところ がこの時期になると、アトピーに替 わって気管支ぜん息や中耳炎、アレル ギー性結膜炎、じんましんなどが起こ りやすくなります。
- 特に生後2〜3歳の秋の頃は、初めて
の気管支喘息が起こりやすい時期です。
気管支ぜん息はアトピーと違い、病状が
軽い時期にはなかなか気づかないもの
です。初めてゼーゼーいって異変に気づ
く頃は、かなりひどくなった状態です。
それにしても、なぜ秋にぜん息発作 が始まりやすいのでしょうか? まず 気候の変化があります。9月の中旬頃からは、朝方急に冷え込む日が増えて きます。とくに台風が通り過ぎた後に は、北からの冷たい乾燥した空気が入 り込んできます。乾燥した空気は、暑い 時期には湿っていた寝具や衣類、さら には生活環境全体を乾燥させていきま す。すると、生活空間にたまっていたホ コリ(ダニやカビ、環境汚染化学物質な ど)が体内に入りやすくなります。
- 夏の間、タオルケットや薄手の綿毛
布などをかけて寝ていて、ある夜から
突然気温が下がって肌寒さを感じ、あ
わてて押入れから冬用の毛布や肌が
け布団を出した。朝起きたら急に冷え
込んでいて、とっさに洋服ダンスにしまってあった冬物の服を取り出した。
そんな経験のある人は多いでしょう。
しかし、これはやってはいけないこと
なのです。
春から夏の間、押入れやタンスにし まってあった寝具や衣類には、高温多湿な時期に増えたダニの糞や死骸、カ ビの胞子や花粉がたくさん吸着してい ます。クリーニングに出したものでも、 タンスに長期間入っていれば要注意で す。もし、押入れやタンスに防虫剤を入 れていれば、衣類は防虫剤に含まれる 化学物質に汚染された状態です。合板 のタンスや押入れ、合成樹脂を使った 収納家具などに寝具や衣類がしまってあった場合も、ホルムアルデヒド(家具 や建築資材に使われる接着剤や塗料な どに含まれる化学物質。シックハウス 症候群の原因のひとつとされている)などの化学物質による汚染が考えられ ます。
秋という季節は、生活空間にこれら のアレルゲンが増えやすい時期なのです。さらに、急に肌寒くなることで、私 たちの鼻や気管の粘膜は敏感になって います。だから、秋に初めてぜん息発作 を起こすお子さんが多いのです。