乳幼児とアトピー第12回 アレルギーっ子を育てる |
監修:角田和彦 かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長 1953年生まれ。 1979年、東北大学医学部卒業。専門は臨床環境医学・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイスときめ細かい診療を続けている。 著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『角田こども&アレルギークリニックのやさしいレシピ』、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)などがある。 |
- アレルギーを起こす子どもを育てていくには、親御さん自身が考え方を変えていくことが必要です。日本人には、「同じことをして、同じものを食べ、同じことに興味を持ち、同じことを考えて」周囲と合わせる傾向があります。ところが、アレルギーっ子を育てる場合は、「みんなと同じにすること」に流されると症状の悪化をまねいてしまいます。
アレルギーっ子を持つ親御さんは、「この子なりのやり方、この子なりの生活、この子なりの食べ方、この子なりの興味、この子なりの考え方を持って、この子なりの成長を遂げること」を大切にして、いろいろ考えてもらいたいのです。
たとえば、アレルギーっ子は、アレルゲンとなる食品を食べることができません。しかし、ある食品を食べることができないことが、その子の欠点なのではありません。その子は、自分の体に合わない食品を敏感に感じ取り、食べないことで健康を保つ能力を持っているのです。
事情がわからない周囲の人たちは、「食べられなくてかわいそう」と言うかも知れません。そんな場合も、家族の方たちには「食べられないこと」を「食べられなくてよかった」と思えるほど気持ちを高めてもらえればと思います。そのためにも、アレルギーや食品について勉強し、生活の様々な場面で子どもたちとも話し合ってください。アレルゲンのある食品を「食べない勇気」を持ち、「選んで食べる」食べ方を身につけることが大切です。
- アレルギーっ子は、環境の変化に敏感に反応します。そして、その変化になかなか慣れることができません。気温や気候の急激な変化、生活環境の変化や悪化など、様々な変化に対して体がすぐに反応できず、様々なアレルギー症状が引き起こされます。
そして、一度引き起こされた反応は、なかなか止められなくなって、いき過ぎてしまう傾向があります。かゆくて掻き始めると止められなくなったり、鼻水が出始めたら止まらなくなるといったようなアレルギー症状から、怒りや不安がなかなか消えないといった精神的な傾向、さらには、好きなことを始めると、それだけに集中してしまって他のことができなくなることもあります。
アレルギーっ子は、環境や心理的な変化に対して非常に敏感に反応できるという、素晴らしい能力を持っています。しかし、その反応をうまくコントロールできずに苦しむことが多いのです。
こういった反応をうまくコントロールするためには、原因となるアレルゲンを生活環境から見つけ出して取り除いたり、食生活を改善するなどして、暴走しにくい体の状態を作り出すことが大切です。
アレルギーについての理解が深まれば、「この症状が始まると、症状の進行が止められずにひどくなっていく」といったことも経験的にわかるようになってきます。家族だけで解決できない場合は、かかりつけの医師に相談することも大切です。適切な時期に適切な対応ができれば、敏感な反応による暴走を食い止めることができるようになるでしょう。