冬にあわせた適切なケアでお肌の状態アップ! |
- いうまでもなく、冬は乾燥の季節で、お肌の乾燥状態を抱えるアトピー性皮膚炎の方にとって、十分な対策を必要とする季節です。この時期のスキンケアがなぜ大切なのか、どういった点に気を付ける必要があるのか、その具体的な方法について順番に見ていきましょう。
- お肌のバリア機能の低下は、アトピー性皮膚炎の悪化要因となるだけでなく、発症要因にも大きく関わります。
アトピー性皮膚炎の方は、表皮の育成因子が少ないことからバリア機能が低下しています。健常な皮膚は、フィルミクテス門と呼ばれる常在菌が細菌叢を形成していますが、アトピー性皮膚炎の方は、皮膚のバリア機能が低下していることで、コリネバクテリウム・ボービスや黄色ブドウ球菌が占める異常細菌叢に変化していることが、慶應大学の研究発表で明らかになっています。こうした異常細菌叢が皮膚でフローラとして定着することで、体内のIgEが増加し、アレルギー的な要因を強めることが分かっています。
つまり、アトピー性皮膚炎の発症、あるいは症状の悪化には、最初のきっかけとして「表皮育成因子の不足によるバリア機能の低下」が関係している、ということです。こうした表皮育成因子の不足によるバリア機能の低下は、角質層内における水分不足の状態を招きます。
角質層内の水分不足は、健常な角質層の形成を妨げることで外部からの異物の侵入を容易にするだけでなく、通常は真皮内に留まるはずの痒みを知覚する神経線維が角質層内に侵入し始めるきっかけにもなっています。
前者の健常な角質層の形成が妨げられれば、外部からの異物の侵入によるアレルギー反応が炎症を生じさせ、痒みにつながります。後者の痒みを知覚する神経線維の角質層内への侵入は、皮膚に対するちょっとした「刺激」が痒みを知覚させることにつながります。特に後者は、通常のアレルギー反応から生じる炎症とは異なり、やっかいな痒みです。現在、増加している成人型のアトピー性皮膚炎においては、この両者から痒みが生じますが、空調システムの普及により生活環境内における乾燥要因が増加していることから、後者から生じる痒みが多くなっているとも言われています。
この痒みを感じてしまいやすい原因を作っている角質層にまで侵入した「痒みを知覚する神経線維」は、角質層が十分にうるおっている状態が続くと、もとの真皮内まで戻ることが分かっています。そうなると痒みの感受性は正常になり、不必要に痒みを感じることも少なくなります。
そのためには、「角質層に必要な水分を与える(保水)」「与えた水分を角質層内に留める(保湿)」というケアが必要になります。乾燥時期は、角質層からの水分蒸散量は増加する傾向が見られます。アトピー性皮膚炎の方の多くは、皮膚のケアは行っていると思いますが、「水分」を角質層に与え切れていない方が多いようです。
かき傷が多いと、水分系のアイテムはお肌にしみやすくなります。そのため、しみることを敬遠して、保水が十分にできていないケースや、あるいは病院でもらう保湿剤はワセリンが多いのですが、こうした鉱物系の油脂は水分を全く含んでいないため、角質層の保護は行えても、基本となるべき「保水」ができておらず、「健常な角質層の保持」それで起こる「痒みの知覚過敏(神経線維の伸長)」を解決できずに症状が一進一退を繰り返すケースが少なくありません。
皮膚に塗布する油分は、角質層内の水分蒸散を抑える役割がありますが、角質層内の水分がもともと十分でなければその意味は薄れますし、角質層内の水分不足を解決することもできません。皮膚に塗布する「油分」は水分の蒸散を防ぐ補助的な役割であって、アトピー性皮膚炎の方にとって必要なスキンケアの主体は「水分」であることを忘れないようにしましょう。