12月に気をつけたいアトピーケアについて |
- 入 浴
- アトピー性皮膚炎の方に必要な「入浴」の目的は、主に「冷えの解消」と「適切に汗をかく」の二つです。
そして、この「冷えの解消」と「適切に汗をかく」という二つの項目を同時に成り立たせるためには、一般的に行われている入浴とは異なる「方法」が必要になります。
では、その「方法」が何かと言うと、「ぬるめの温度での入浴」と「一定時間の入浴」の二つになります。
入浴温度は、これまであとぴナビで何度も述べている通り、38〜39℃のぬるめの温度がアトピー性皮膚炎の方にとって適切な入浴温度になります。一般的な入浴温度は全国調査で41℃という結果が出ていますが、41℃での入浴は、冷えの解消につながらず、不適切な汗をかくことになります。
冷えとは、体の熱を運ぶ「血流」が悪い状態を指しているのですが、41℃の熱は体にとって大きな負担になりますから、皮膚表面は受けた熱を即放出しようと赤くなり、体内の深部では熱を伝えないように血流を悪くさせます。つまり41℃以上の温度は、体にとって「高温」であり、リスクを伴っている温度である、ということです。したがって、高い温度に入浴すると息が苦しくなったりするのも、体がこれ以上の熱を受けないように、自覚症状として「苦しい」という状態を生み出している状況です。また、こうした「高い熱」を体が受けると、当然、それを放出する必要が生じますが、ヒトが体温調節で行うもっとも即時的な方法が「汗をかくこと」です。
高い温度で入浴した際にでる汗とは、「気化熱により熱を放散させるための汗」のため、肌そのものは乾燥しやすい状態に陥ります。
それと比較して、ぬるめの温度で「ジワッ」とかく汗は、体熱の放散を強く求められておらず、皮脂を伴った汗となり、皮膚表面で皮脂膜を形成、自分の体でスキンケアを行う役割を担います。同時に、角質層に一定の水分をもたらしてくれます。
この「ジワッ」とした汗をかくためには、高すぎない熱をゆっくりと伝えることが必要と言われています。体に熱を伝える血流は、心臓から出て戻ってくるまでに1周約5分ほどかかるといわれており、冷えの解消につながるための、ゆるやかな熱の伝達を加味して考えると、アトピー性皮膚炎の方に求められる「汗をかく」、「冷えを解消する」、この2点を実現するために必要な入浴時間は約20〜30分と考えてよいでしょう。
同時に「入浴回数」にも注意が必要です。
次の「睡眠」の項目のところで「低体温」について述べていますが、アトピー性皮膚炎の方には、低体温が多く見受けられます。また、痒みによる睡眠時間の「ズレ」が生じやすい状況もあります。
一般的に入浴は、就寝前、夜に行う方がほとんどでしょう。実際、寝る1・5〜2時間前ぐらいに入浴を終えると、その後の体温低下で入眠しやすくなることが分かっています。しかし、これから冬を迎え、寒くなる時期には「朝の入浴」も取り入れるようにしましょう。
体温は、朝食時にある程度、温度が上がっていることで朝食による熱を「上手に活用」して体温をさらに上げます。夜の睡眠のリズムが乱れている方の場合、この朝食時に体温を上げた状態にもっていくことができず(逆に、体温が低いピークを迎えていることが多い)、午前〜午後にかけて体温を上昇させる機会を得られていません。
そこで、行いたいのが、朝食前の入浴です。
睡眠リズムによる体温の上昇が得られていないとき、入浴により体温を上昇させておくと、日中の基礎体温がわずかでも上昇しやすくなります。また、寒い時期、外出すると血流はどうしても悪くなりますが、朝の入浴は、この日中の血流の低下をゆるやかに抑えてくれる働きもあります。この場合、注意して欲しいのは、入浴後に必ず「朝食を摂る」ということですが、日中の血流改善のためにも、朝食が取りづらい場合も朝の入浴はお勧めです。
学校や仕事など、通勤・通学により朝の入浴時間が取れない、という方も多いかとは思いますが、少なくとも睡眠リズムが上手く取れていない状況下においては、この「低体温」の解消、そして冷えの解消は、自律神経と内分泌の活動に連動していきますので、アトピー性皮膚炎の解消のためには、かなり優先して必要となってきます。
アトピー性皮膚炎を「優先して治したい」と考えている場合には、優先すべき生活も考えて行動することも大切になります。
適切な入浴で、冷えの解消、掻き傷の軽減、そして体温の上昇に伴う代謝のアップを目指すようにしましょう。