初夏のアトピーケアの ポイントとは? |
これからの季節に、もっ とも悪化要因となりや すいのが「汗」です。 汗には、お肌を「守る」 スキンケアの役割が備 わっています。
- ● 汗と皮脂が乳化して皮脂膜を形成 する
● ダームジンなど、抗菌物質が「悪玉菌」の細菌叢の形成を防ぐ
-
これらは、アトピー性皮膚炎の方
にも大切な役割なのですが、やっか
いなことに汗には、アトピー性皮膚
炎を悪化させる要因も含んでいます。
広島大学の研究で、汗をかいたとき
に痒みなどのアレルギー反応を引き
起こすのは、カビ(マラセチア真菌
群など)由来のタンパク質が汗によっ
て皮膚に溶け込むことが原因である
ことが解明されています。
実際、汗をかくと「痒み」を感じ 始める方は多いのではないでしょう か?
これは、このマラセチア真菌群が 作り出すタンパク質に対してかぶれ ることで、炎症が生じることが原因 と考えられています。
このように、汗はアトピー性皮膚 炎にとって「プラス」と「マイナス」 の両面の要因となり得るわけですが、 できるだけ「プラス」の要因を得て、 「マイナス」の要因は排除できるよう にしたいところです。 そこで、大切になるのは、
- ● 汗はしっかりかく
● かいた汗は、手早く拭きとる
という対処です。 汗で痒みが生じる経験があると、 どうしても「汗をかかない」生活を 心がけたくなります。
しかし、気温が上昇すれば、必然 的に汗は「かくもの」です。それを 抑えるためには、冷房など、代謝を 下げたり冷えの要因を作り出す環境 の中に身を置かなければなりません。
アトピー性皮膚炎の「痒み」に関 わる「免疫機能」としての部分は、 体のバランスが大きく関わっていま す。
免疫機能に強い影響を与えているの は、自律神経と内分泌機能ですから、 体のバランスを乱すような生活環境 は、アトピー性皮膚炎の「痒み」を 誘発しやすい要因と言えるでしょう。
また、汗をかかなければ、自らの 体で「スキンケア」を十分に行うこ ともままなりません。
アトピー性皮膚炎を引き起こす原 因の一つは、皮膚のバリア機能低下 (細さいきんそう菌叢の異常状態や乾燥などから) にありますから、汗をかかない=ス キンケアが十分にできない=皮膚の バリア機能を高めることができない、 ということに繋がってきます。
したがって、汗をかかない生活は、 アトピー性皮膚炎を自ら「治していく」ことが難しい生活とも言えます。 もちろん、かいた汗にかぶれて、痒 みが生じることは良くありません。
しかし、「汗をかかない生活」を目 指すことは、アトピー性皮膚炎の解 決から遠ざかっていくことになるこ とを忘れないようにしましょう。
※ ダームジン= 汗に含まれる抗菌ペプチドの 一つで、抗菌活性により雑菌の繁殖を防ぐ。
※ 細菌叢= ある特定の環境で生育する一群の 細菌の集合。