入浴方法3つのポイント 入浴温度 |
- 入浴温度は、アトピー性皮膚炎の方がもっとも注意すべき「入浴方法」です。
この温度がわずか1~2度違うだけで、アトピー性皮膚炎に対してプラスの影響を与えるの か、マイナスの影響を与えるのかが異なってきます。
- マイナスの影響について
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アトピー性皮膚炎の方にマイナスの影響を与える入浴温度は、原則として40度以上と考えておき
ましょう。
ここで誤解しないで欲しいのは、40度以上の入浴が、「ヒトの入浴」として適していない、ということではありません。
適していないのは「アトピー性皮膚炎の方の入浴」の場合であって、健常な方ならば、極端な話、どのような温度であっても入浴時間などをコントロールすることで、何らかの効果を得ることができるでしょう。
では、アトピー性皮膚炎の方は40℃以上の入浴で、どのようなマイナスの影響を受けるのでしょうか?
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ヒトの深部体温(内臓で測った温度)は37~38℃前後といわれています(表面温度は35~36℃前後)。
そして「体の熱(体温)」は、内臓、筋肉、骨などで作られ、血液を通して体の隅々まで届けられます。
「冷えは万病のもと」とよく言われますが、これは、冷えを感じる=体の熱がうまく運ばれていない=血流が悪い、つまり「血流が悪いと万病の もとになる」ということです。
同様に、体の外の熱も血液を通して体の深部に運ばれます。
40℃のお湯に入った場合、その熱は皮膚の毛細血管から体の深部へと向かいます。
しかし、内臓の温度が40℃を超えることになると、これは生体維持に黄色信号がともることになります。
ヒトは爬虫類などの外気温に体温が左右される変温動物ではなく、常に一定の体温を保つ恒温動物です。
深部温度が2~3℃高くなっても低くなっても、そのままでは生きてはいけません。
そのため、40℃以上の浴湯で入浴した場合、その熱を「受けないように」、体は次の反応を示すようになります。
- ● 外部からの熱を皮膚でとどめる→を受けて皮膚の血管が拡張、赤くなる
- ● 皮膚から熱が内臓に届くのを遅らせるため体内の奥深い部分の血管を収縮させる(冷えの状態を作る)
- ● 外部からの熱を受ける状態(入浴)を続けさせないため辛い状態を自覚させる
- ● 受けた熱を放散するために急激な汗をかく
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この状態を無視して体内の深部温度よりも数度高いお湯に入浴を継続させた場合、やがて意識を失ったり、内臓の機能不全など、極めて深刻な状態に陥ります。
このように、体温よりも高い入浴温度で「長時間」入り続けることは、生命維持の機能に対して危険信号を灯すことになるわけです。
同時に、アトピー性皮膚炎の方にとって、皮膚の機能にも影響が出始めます。
皮膚はいつでも熱が放散できるように、血管を拡張、赤みを帯びた状態になります。
この状態のままお風呂を出ると、すぐに皮膚の水分蒸散量を増加させ、気化熱の働きにより、体温を下降させようと働きます。
そして、皮膚からの水分蒸散量増加=角質層の乾燥状態を招く、ということになりますので、肌の乾燥→バリア機能の低下、というアトピー性皮膚炎の症状悪化の原因となるわけです。
先に述べた体への影響は、短い入浴時間であればさほど大きなものではありません。
高温での短時間入浴、という方法も健常な方なら、メリットを得られることもあるでしょう。
しかし、アトピー性皮膚炎の方の場合、短時間であっても、皮膚に受けた熱を「冷ます」ための働き、角質層の水分蒸散量の増加、という状態は変わりませんから、バリア機能の低下、という観点からみると、悪影響を受けることになります。
これまで、アトピー性皮膚炎のご相談を受けている中で、入浴の仕方として、もっとも多い「誤り」が、この「入浴温度」であるといってよいでしょう。
確かに体感的には40 ℃では物足りない、という方もおられます。冬など外気温が低いときにはなおさらでしょう。
しかし、皮膚が「熱を逃がさなければならない」と感じる入浴温度は、アトピー性皮膚炎の方に限って言えば、肌状態の悪化を招く、もっとも大きな要因なのです。