科学物質過敏症とアトピー |
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- 「化学物質過敏症」「シックハウス症候群」という言葉もあるとおり、衣食住の生活環境内の化学物質汚染が身体に及ぼす悪影響が問題になっています。アトピー性皮膚炎とも関係の深い化学物質過敏症について考えてみます。
- 1.増え続ける化学物質過敏症とアトピー
- 「さまざまな不快症状にみまわれる化学物質過敏症。その正体はなかなか解明されてきませんでした。最近ではさまざまな症例から、症状や原因について研究されるようになってきています。
- ■ 化学物質過敏症とは、微量な化学物質に反応して起こる不快症状
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新築住居に入居した後やリフォームした後に、のどの痛み、目のチカチカ感、頭痛、気持が悪い、下痢、関節の痛み、疲れやすい、集中力・記憶力が低下、ぜんそくやアトピーがひどくなった、という症状にみまわれることがあります。
この症状は実にさまざまで、化学物質過敏症の一つであるシックハウス症候群ともいわれています。
微量の化学物質で反応した場合には、前述のような諸症状に悩まされる化学物質過敏症となります。また、大量の化学物質を浴びた場合は中毒症状を起します。
化学物質過敏症とは、「かなり大量の化学物質に接触した後、または微量な化学物質に長期に接した後で、非常に微量な化学物質に再接触した場合に出てくる不愉快な症状」です。中毒との違いは、家族全員がかかることが少ないこと、原因となっている住居などを離れても、その後さまざまな微量の化学物質に非常に敏感に反応するようになる点です。
- ■ 増え続ける化学物質と身体に及ぼす悪影響
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化学物質過敏症は、私たちの身近な環境で化学物質が急激に増加し、省エネ対策で高気密になった住宅が普及してから特に問題になってきました。
人類がこれまで開発してきた化学物質は1600万種類にのぼり、毎日2千種類の新しい化学物質が報告され続けているといわれています。
しかし、一つ一つの化学物質の安全性の確認が不充分なまま、環境に満ち溢れている状態。
特に問題なのは、空気汚染。人は1日に15〜20kgもの空気を取り込んでいます。空気中の化学物質は肺から血液に溶け込んで身体中を巡り、各臓器に悪影響を与えます。特に直接脳まで流れ込んで、中枢神経系まで到達するコースもあります。
- ■ 化学物質過敏症の原因は、微量化学物質による体内環境の乱れ
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人の身体は過酷な外部環境に抵抗し、身体の内部環境を常に一定に保とうとしています。これを「ホメオスターシス」といいます。その内部環境を維持していく3本柱が、
1.免疫系
2.内分泌(ホルモン)系
3.自律神経系
です。
ところが、この3本柱は非常に繊細で、微量の化学物質に影響され変化することが知られてきました。そして、やっかいなのはこれらの3本柱は互いに連動しており、1本が乱れれば他も乱れてしまうこと。そのため、化学物質過敏症で自律神経系が異常をきたすと、アレルギー症状のアトピー性皮膚炎が引き起こされたり、悪化することがあります。また、アレルギー体質の人は、自律神経が乱れていることが多く、化学物質過敏症が起こりやすくなります
- ■ アトピーと化学物質過敏症、その違いと共通点
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化学物質過敏症の場合、特に自律神経系を中心とした不快症状が出現。しかし、原因物質によって必ずしも一定の症状が出現してくるわけではありません。
例えばホルムアルデヒドが原因で現れる症状は、頭痛か、精神症状か、関節痛か、下痢か皮膚炎かは、体質によって変わります。皮膚炎の症状として現れた場合にはアトピー性皮膚炎と診断されるケースもあります。アレルギー症状としてのアトピーなのか、化学物質過敏症としてのアトピーなのかは非常に区別がつきにくい問題ですが、相互に深い関係があることは確かです。
また、同じ化学物質の環境にいても、発症する人としない人がいます。化学物質への感受性、耐久力、適応力の個人差は、個人の生活歴、職業歴、生活態度、遺伝的体質などによってさまざま。精神的なストレッサーも影響を及ぼします。