アトピー改善に役立つ睡眠の話 |
監修 内山 真
日本大学医学部精神医学系主任教授。専門は精神神経学、睡眠学、時間生物学。1954年、神奈川県生まれ。東北大学医学部卒業。東京医科歯科大学で精神科研修医、現・国立精神・神経医療研究センター室長、へファタ神経学病院睡眠障害研究施設(ドイツ)センター長などを経て、現職に到る。主著に『睡眠のはなし』中公新書、『睡眠の病気(別冊NHK今日の健康)』NHK出版などがある。
- Q アトピーを治すためには、 たくさん寝たほうがいいの?
- ● 標準的な睡眠時間で大丈夫
- アトピー性皮膚炎だからといって睡眠時間を特に多く確保する必要はなく、健康な人の標準的な睡眠時間で十分です。標準的な睡眠時間は、年齢差や個人差はあるものの、6時間台から7時間台あたりと考えてください。
睡眠時間についてはあとぴナビレター8月号の「理想的な睡眠時間は?」で詳しく説明しましたが、短すぎても長すぎても高血圧や糖尿病などの生活習慣病にかかるリスクが高くなります。
- ● 感染症にかかると眠気が強くなる
- ところで、風邪をひいたときに、いつもより長時間ぐっすり眠れたという経験のある人は多いのではないでしょうか? 風邪など全身性の感染症にかかると、体がだるく眠気が強くなります。そして、いつもよりよく眠った後に治ってきます。昔から、肺炎になってもよく眠る人は経過がよいといわれています。
- ● 免疫機能が体を休ませている
- これは、睡眠で体が休まることもありますが、体に備わっている免疫機能が関係しています。体を病原菌から防御する免疫の働きは血液中の白血球が担っていますが、白血球が主に作り出すサイトカイン(細胞に情報を伝達する役割を持つタンパク質)には、睡眠物質(プロスタグランディンD2 など脳内で眠気を引き起こす作用のある物質)の働きを高めるものがあることがわかってきました。
風邪などの感染症にかかると、白血球は睡眠物質の働きを高めるサイトカインを作り出して体を休めるように促がしながら、病原菌と戦っているわけです。
アトピー性皮膚炎の患者さんは、ヘルペス(帯状疱疹)などの感染症を併発することも多いので、その場合はいつもより眠くなりやすくなるかもしれません。