アトピー性皮膚炎の真の原因を探る |
- 1.アトピー性皮膚炎の原因となる体の異常状態とは?
- これまで述べてきたように、アトピー性皮膚炎が増加してきた背景には、「生活環境の変化」が挙げられます。では、これらの生活環境の変化によって、アトピー性皮膚炎の原因となる「体の異常状態」が私たちの体にどのように引き起こされるのでしょうか?
アトピー性皮膚炎の原因について、あとぴナビでは、大きく分けて次に上げる二つを考えています。
一つが肌の問題である「皮膚のバリア機能の低下=角質層の機能低下」、もう一つが体の問題である「免疫機能の異常=アレルギー」です。
アトピーの発症には前述したように、日常のライフスタイルが大きく影響しています。増加するストレス、悪化する自然環境、運動不足、睡眠不足、食品添加物や偏食などの食習慣、化学物質に触れやすい環境(衣・食・住)などあげたらきりがありません。これらを心身に対する負荷と考えたときに、その負荷がその人の恒常性維持機能(ホメオスターシス・体を健康な状態に保つ機能)に支障をきたすレベルに達すると、体にさまざまな異常状態が生じ始めます。それが長く続いたときに生活習慣病といわれる病気が発現します。アトピー性皮膚炎もその例外ではありません。
- (1)皮膚のバリア機能の低下(肌の問題)
- まずは、アトピー性皮膚炎の特徴として、皮膚のバリア機能が低下している方が多いという事実があります。
その原因としては、生まれつき肌が弱いという方もいれば、仕事などで化学物質を良く使うために肌が弱くなった方や、日中エアコンなどの人工的に快適な環境下での生活が多くなることで肌を自然に鍛えるような機会が極端に少なくなったために肌が弱くなった方などさまざまです。体の機能は使わなければ衰えます。
皮膚とて例外ではありません。やはり、生活の中で皮膚機能を自然に鍛える環境が減ったことも「皮膚バリア機能の低下」の原因ではないかと考えられます。
皮膚のバリア機能は、角質層の状態で判断できます。角質層は表皮の一番外側にあり、水分保持や外部の刺激から皮膚を守る役割を担っています。そして健全な角質層は、折り重なる角質細胞の間をセラミドなどの細胞間脂質で満たされていて、イメージ的にはサンドイッチの間にたっぷりとバターが塗られているような状態になっています。そうすることで高いバリア機能を保っています。
しかし、最近のデータでは、アトピー性皮膚炎の方はこの角質層のセラミドが健康な方の肌と比較して約30%ほど少ないことがわかっています(アトピー性皮膚炎の方は角質層内におけるセラミド生成機能に支障があることがわかっています)。どうしてそうなるのかについての医学的に断定された原因は特定できていませんが、先ほど述べた日常生活における皮膚に対して継続するマイナス要因が何らかの形でそうさせるのではないかと考えられています。
- (2)免疫機能の異常(体の問題)
- 次に、アトピー性皮膚炎のもう一つの原因である「免疫機能の異常=アレルギー」について考えて見ましょう。最近の研究では自律神経系のアンバランスが免疫系にさまざまな悪影響を与えることがわかっています。
自律神経とは体のさまざまな機能を自動調節している神経で、スイッチでいえば「ON」の役割(緊張、興奮、行動)を持つ『交感神経』と「OFF」の役割(リラックス、休息)をもつ『副交感神経』でできています。これらは、人間本来の体内時計、生体リズムによって、働く好ましいタイミングがあります。
例えば、人間は暗くなると眠くなります。これは副交感神経が優位になることを示し、夜眠ることが体にとって好ましいということを示しています。しかし、現在ではテレビ、コンビニ、パソコンなどの24時間生活、昼夜逆転など、本来副交感神経が優位になるべきところで交感神経が優位になることが多くあります。これらと同じ(又は逆)状況が生活習慣の中で多くおきると自律神経系のアンバランスを招きやすくなります。
- それでは、これら自律神経系のアンバランスが免疫系にどのような影響を与えるのでしょうか?
免疫の働きを持つ白血球には、「顆粒球」と「リンパ球」があり、顆粒球は体内に入ってきた細菌などの異物を取り込んで消化分解する働きがあり、リンパ球はウイルスなど小さすぎて顆粒球には処理できない異物(抗原)を、免疫の力で処理します。この顆粒球とリンパ球の通常の割合は約60対35ですが、そのバランスが免疫にとっては大切になります。
最近の免疫学の研究では、顆粒球は交感神経が優位のとき、リンパ球は副交感神経が優位のときにそれぞれ増加し、通常の割合を越えて顆粒球が増えすぎると粘膜に炎症を起こしやすくなり、リンパ球が増えすぎるとアレルギーを起こしやすくなることがわかっています。
アトピー性皮膚炎の場合は交感神経優位の状態の方が多く、実際にそのような方の多くには、一進一退を繰り返しやすく、ちょっとした事で傷や炎症が現れやすい状態が見られます。これは粘膜に炎症を起こしやすい顆粒球増の状態をまねいていることも原因の一つと考えられます。このように自律神経のアンバランスが、アトピー性皮膚炎の症状に深く関わる免疫系にも影響を与えるのです。
これら、免疫機能の異常と皮膚のバリア機能の低下状態が複雑に作用し、アトピー性皮膚炎を発症させていると考えられます。つまり、アレルギーという動力が、皮膚バリア機能の低下と、粘膜に炎症を起こしやすい状況と連動し、さらに負荷として環境因子が加わることで、アトピー性皮膚炎の発症や悪化・慢性化を招いていると考えられます。では、これらアトピー性皮膚炎の原因をどのように解消してゆけばよいのでしょうか?