アトピー性皮膚炎に対する温泉の効果を探る |
- 「どうして温泉湯治でアトピーを克服できるのか?」
- 1.温泉湯治は自然治癒力を高めて治す根治療法
- 近代医学の発達した昨今、生活習慣病をはじめとする慢性疾患は、その治癒に至る絶対的手法はいまだ確立しておりません。それは、アトピー性皮膚炎も同様です。
しかし、実際に、アトピー性皮膚炎を根治させた方は数多く存在します。その多くのアトピー性皮膚炎を克服まで導いた実績のある手法、それが「温泉湯治」です。では、どうして、温泉湯治はアトピー性皮膚炎を根本的に治すことができるのでしょうか?それは温泉湯治が、温泉特有の作用により、血液循環を良くし、自律神経、内分泌系、免疫系の体の各機能を正常化に向かわせる力、つまり自然治癒力を活性化させることにあるといえるでしょう。
人間をはじめ全ての生き物は、何らかの形で「自分の体を自分で治すシステム」を備えています。風邪を引いたときや怪我をしたときに元の元気な体に戻れるのは、その「自分の体を自分で治すシステム」の働きのおかげです。外科手術で、手術は成功したが命は失ったという場合に、手術そのものは医師の手で行いますが、例え難しい手術が成功したとしても、その傷が癒えて塞がり、元の健康体に戻れるかどうかは、最終的にその人の生命力、すなわち「自分の体を自分で治すシステム」の力に掛かっているからです。
そういった意味から考えると、どんな病も最終的に治すのは自分自身であるとも言えます。そして、この自分自身で病を癒す、つまり体の異常状態を修復させる自然治癒力を活性化させる効果が温泉湯治にはあるのです。特にアトピー性皮膚炎が発病する原因は、社会生活を営んでいく上で体に生じた自律神経、免疫系、内分泌系の異常状態にあります。
そして、温泉湯治は、このアトピー性皮膚炎の原因そのものを自らの力で解消させる方向に働くことで、アトピー性皮膚炎を自然消退させることができるわけです。ただし注意点としては、体の異常状態を解消させようと自然治癒力が働いても、その最中にさらに体の異常状態を生じさせるような生活を行っているのでは、あまり意味がないことを知っておくべきでしょう。
ステロイド剤など、現在医師が行う主だった治療法の問題点が、まさしくそこにあります。アトピー性皮膚炎の症状を薬剤で抑えても、アトピー性皮膚炎を体が「必要とした」原因の解消は行えませんから、いつまでも体は炎症やかゆみを引き起こすことになり、やがては、その症状を抑えるために、薬剤の使用が長期化していくという危険性があります。温泉湯治は決して万能ではありませんし、それ自体が病を癒してくれているわけではありません。あくまで主体は、自分であり、温泉湯治をどのように体に効果的に活かすことができるのか、ここがポイントであり、大切なことだということです。
- 2.アトピー性皮膚炎の真の原因を効果的に解消する温泉湯治
- 今まで、アトピー性皮膚の原因について述べてきました。整理をすると以下の通りです。
次頁をご覧になりながらお読み下さい。 青字は改善する内容が、個々人においてある程度はっきりしているので、自分自身の行動、努力をもって改善していくべき内容です。赤字はそれらによって形つくられたアトピー性皮膚炎を発症・悪化せしめる体質・原因ですから、物理的な環境を整えたり、気持ちのあり方が変わったからといってすぐ良くなるわけではなく、青字にある内容の生活習慣を整えて様子を見るだけでは効果的には改善していきません。
なぜならば、長年かけてできあがった体質でありアトピー性皮膚炎を発症・悪化せしめてきた体の異常な機能が改善されにくいからです。根本的に新しいシステムの構築を行うのなら、それらをいったん壊し再構築する力が必要です。
そのために、青字にある改善と同時に、自律神経・免疫系・内分泌系・皮膚ケアなど全体のバランスを整えながらも個々の機能改善が確実に図れる(=自然治癒力増)具体的な方法を試みるべきでしょう。つまり、赤字の内容を個々に改善できる効果を持ち、全体としても常に連携をとりながら、最終的に治癒に向けた総合力を高めていける方法です。実はこの「力」が温泉湯治にはあるのです。
- ■アトピー発症・悪化の原因
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(1)遺伝的要素
(2)外的環境
・アレルゲン(ダニ・ホコリ)
・化学物質(衣・食・住)
・生活習慣
カウンセリングにより、個々人の克服の妨げになっている原因を特定し、できる事から改善していく
(3)体内環境・自律神経のアンバランス
・免疫系のアンバランス
・内分泌系(ホルモン)のアンバランス
・血行不良
・新陳代謝の低下
・体温調節不良・皮膚のバリア機能(水分・皮脂膜・角質層)の低下
温泉の持つ効果で改善を図る。カウンセリングで個々人に合った、またその時々に合った効果的な入浴法を実践し、体の異常状態を改善していく
(4)その他
・精神的ストレス
・薬物依存
カウンセリングにより、個々人の克服の妨げになっている原因を特定し、改善できるところから実行していく
- 3.温泉は本当にアトピー性皮膚炎の「体内環境」の原因を改善することができるのか?
- 温泉については左記のような効果効能が医学的にも証明されています。
そして、左記の表を見ると、温泉にはアトピー性皮膚炎の発症・悪化の原因となる体内環境項目を改善する効果があることがわかります。温泉には、異常状態に陥りアトピー性皮膚炎を発症させた体の機能を緩やかに正常化し、人間本来の機能を取り戻す効果があります。このように自然でありながら強力かつ効果的に、しかも根本的に病を癒す力を持ったものが「温泉」であるといえます。
- 1.温熱作用について
- 温熱作用とは、体が温まる作用であり、血流促進や新陳代謝(発汗)の促進効果があります。これは温泉特有の作用ではありませんが、他の浴水とは比較にならないくらいに高い力を有します。なお、強い発汗促進作用は、デトックス(排毒)効果が高いだけでなく、皮脂腺から分泌される皮脂と汗腺から分泌される汗が乳化して皮脂膜を作り皮膚に潤いを与え、バリア機能を強化する働きがあります。
- 2.含有成分の作用について
- 含有成分の作用とは、温泉特有の作用であり、温泉に一定量以上含まれるイオン化した成分が皮膚に対してスキンケア効果をもたらすのと同時に、体内に吸収されて内分泌系や自律神経系に働きかける効果があります。また非特異的変調作用を強力にする作用があります。
- 3.物理作用について
- 物理的作用とは水圧と浮力のことで、リラックス感と血流促進効果があります。また、温泉独特のつるつるとした肌触りはスキンケア効果だけではなく、よりリラックス感を増す効果もあります。
- 4.非特異的変調作用について
- 非特異的変調作用とは温泉特有の作用です。右記1~3の作用を受けて体に現れた変調に対しては、元に戻そうとする「恒常性」という体の力が働きます。この恒常性は正常化作用とも呼ばれ、例えば血圧が高い人であれば血圧を下げ、血圧が低い人であれば血圧を上げるなど、その働きはあくまで正常な機能を取り戻すという方向性に働いてくれます。
この恒常性は内分泌系・自律神経系にも深く働きかけ、それまで低下していた体の諸機能を動かし、結果的に活性化した体の機能が免疫系の異常状態も改善してくれることになります。温泉湯治によりアトピー性皮膚炎を克服できた方は、この温泉特有の作用である非特異的変調作用によるものが最も大きいものと考えられます。
- 5.飲泉について
- 飲泉は、源泉を所有している湯治宿であれば飲み場を設けているところが多いようです。湧き出たところで飲む温泉は、さまざまな効果がありますが、一般的なものとしては「便通改善(整腸作用)」が数多く報告されています。また、飲泉は内臓の温泉浴とも言われ飲泉をすることでも非特異的変調作用や発汗、新陳代謝を促す作用があります。
- 4.温泉は「体」と「肌」の異常状態を改善
- これが、アトピー性皮膚炎改善のポイント 温泉の効果効能が、アトピー性皮膚炎の原因となっている体の異常状態を改善することは前述した通りです。これを簡単にまとめると、アトピー性皮膚炎の克服に必要な「体」と「肌」の両面への効果的な働きが温泉にはあることがわかります。
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温泉の歴史は古く、今のように優れた医療も薬剤もない時代から、「湯治」、読んで字の如く「湯で治す」力、つまり人々を癒す力を持つ優れた治療法として存在していました。現代でも、「湯治」が生活習慣病といわれる疾患の治療として頻繁に利用されており、その効果は西洋医学の体系を中心とした現代医療が進んだ今でも、人々の間では確固たる事実として認知されています。
実際、科学的な研究においても、温泉湯治がなぜ病に効くのかについて解明されている部分も多くあります。そして、この「湯治」を治療として利用することは、アトピー性皮膚炎においても例外ではありません。
これまで不治の病とされてきた数多くの病気も、現代医療の進歩により、いくつかは恐れるに足らないと感じることができるようになりました。しかしながら、昔から身近な病気といえる、風邪やインフルエンザで亡くなる方は後を絶ちませんし、アトピー性皮膚炎、糖尿病、癌やリウマチといった生活習慣病だけではなく、不定愁訴や躁鬱など、何らかの体および心の慢性的な異常を訴える人は増加の傾向にあります。そしてそれらの慢性疾患に対して薬物治療の限界を感じている人が多い今、「温泉湯治」は時代を超えて、現代の象徴的病気であるアトピー性皮膚炎をはじめとした生活習慣病を根本的に治す力を持つ優れた自然療法として見直され、活用されるべきだと言えるでしょう。
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体温に近い不感温度でも芯から温まる
だからアトピー肌にも負担が少なくむしろ効果的
温泉に入って、お肌がつるつるした、芯から温まったという経験がある方は多いはずです。お肌が乾燥しやすい方の理想的な温泉入浴は、弱アルカリ性の単純泉などのお肌に負担の無い温泉に「38度くらいのぬるめの湯」で「ゆっくり長目に入浴すること」です。
温泉の特徴には「良く温まる」ことがありますが、これは正確に言うと「体温より少し高い温度くらいでも良く温まる」ということです。
さまざまな温泉成分やその他の複合的な効果にその力があるとされており、実はこれがアトピー性皮膚炎の方にとっても大切なポイントとなるのです。寒くなってくると、調子をくずす方が多くなります。その原因は千差万別ですが、主な原因と考えられる一つに「入浴温度」があります。寒くなると入浴温度は知らず知らずに高くなってしまう傾向にあるようですが、アトピー性皮膚炎の方の場合、40度を超えるような高温度で長時間の入浴すると、肌の皮脂などが落ちやすく、ましてや水道水(または化学系入浴剤)での入浴では含まれる刺激物質の影響もあり、バリア機能への負担が増します。
つまり、入浴効果を体に得ようとすると、同時に肌へのダメージも多く受けてしまうということが起きるのです。しかし、温泉の場合は、38度くらいのお湯にゆっくり入ると、最初は寒く感じても次第に汗が噴出し、入浴後も肌の乾燥もしにくくいつまでも体が温かく心地よい状態になります。それは、温泉の成分による肌へのスキンケア効果に加え、効率よく体全体に温熱効果を伝えることで、血流促進や新陳代謝を促進することができるからです。
つまり、これは十分な入浴効果を「肌」と「体」に同時に効率よく与えることができるということを示しています。寒い季節に悪化する方は、高い温度の入浴をしないと温まらないと感じて、高温浴(アトピー肌には)になってしまいがちです。
もちろん、実際水道水をそのまま使用しての入浴だと、38度の入浴では温まりにくく入浴後の湯冷めが激しいため、寒い季節は高温浴でないと入浴が難しく感じるでしょう。しかし、それが却ってバリア機能を低下させることで悪化させている原因の一つであることを理解しておきましょう。
*人間の体温は36・5度くらいのため、38度のお湯に入っても体は冷えることはありません。また、不感温度では長時間入浴が可能になりますが、ゆっくり時間をかけて入ることで、汗腺だけでなく、皮脂腺から皮脂が無理なくじわじわ出てきます。そしてこれは体が芯から温まっているため入浴後も皮脂の分泌は続きます。皮脂は、汗腺の汗と違い有害物質の排泄に効果的とされ、また、皮脂は汗と乳化して皮脂膜を作る働きもあります。これが、入浴後お肌が乾燥しにくくなる理由とされています。40度を超える高温浴は、肌で熱さを感じるために温まったように感じますが、体温は36・5度ですから余り温度が高いと、体は却って熱を受けまいとして芯から温まりにくくなります。肌にも負担が大きく、汗も汗腺からの汗が多くなり、デトックス(排毒)効果はなく、かつミネラルバランスを崩しやすくなります。
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暑い夏、湯治なんかと思っていませんか?
実は、秋冬の症状改善・安定には「夏の湯治」が大切なのです。
- アトピー悪化の原因物質を排泄し、解毒機能が低下する秋冬に備える
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夏は、解毒効果の高い37度~38度の不感温度での入浴も快適に行えます。この温度でゆっくり入浴すると、皮脂腺からの汗の分泌が促進されるため、アトピー悪化の原因ともなっている脂肪に残留した化学物質や、特にステロイド使用者の場合は、体内に入って酸化した酸化コレステロールなどの排泄が効果的に行われます。
酸化コレステロールは炎症を肌に起こしやすい物質ですので、排泄することは症状の安定には不可欠です。新陳代謝が低下する秋冬に備え、症状悪化の原因物質をできるだけ排泄しておきましょう。
- 皮膚のバリア機能を鍛錬し、乾燥する秋冬に備える
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皮脂膜、角質層を中心とした、しっとり肌の条件である皮膚のバリア機能は、この発汗機能と大きな関係があります。
湯治をすると当然汗腺からも多くの汗をかきます。この汗は、水分が主でミネラルや塩分なども含まれています。この汗と皮脂腺から出る皮脂が混ざり合い皮脂膜が作られ、肌の保水・保湿効果が高まります。アトピーの方は、発汗機能が低下している方が多いので、季節柄ムリのない夏にこれらの機能を鍛えておくと、それらが低下しがちな秋や冬に、炎症の原因となる物質を減らし、なおかつ皮膚バリア機能を活性化できるので、環境変化の刺激に強くなり、症状の悪化などを招かないですみます。
秋冬に悪化する多くは、せっかくの夏に、汗をかくことを苦手と思い込み、できるだけそれらを避ける生活をしている方に見られます。特にステロイドやプロトピック軟膏を使用していると、皮膚表面の血管は収縮しますので、エアコンの生活と組み合わさると余計に発汗機能は低下します。そうなると「炎症を起こす原因となる物質は排泄されにくく脂肪に残留していく」、「皮膚のバリア機能も鍛えることができずに低下していく」という事態が起きます。
これは発汗機能を含め新陳代謝が低下し、空気の乾燥が増す秋冬に、一気に症状が悪くなる原因となっています。夏に、温泉湯治で「皮膚と体の解毒」と「皮膚のバリア機能の鍛錬」をして、快適な秋冬生活に備えましょう。
- さらに効果を高める大切な実践ポイント
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湯治では「浴湯」が直接肌に触れるので、出来るだけ良質な浴湯であることが望ましいといえます。温泉や活水器を通した水が理想的ですが、最低でも肌に刺激の少ない水を使用してください。
夏場は、汗で塩分やミネラルが消耗する量が多いので、ビタミンC、B、ミネラル類の補給を常に心がけてください。特に夏は、入浴後ボ~ッとするようであれば自然塩などでの塩分補給も大切です。充分な塩分がないと体力消耗してしまいますので気をつけてください。また、ビタミン類やミネラル類はサプリメントで補うと良いでしょう。そうすることで体力の消耗を防ぎ、より効果的解毒効果を高めます。
かいた汗は長く放置しないこと。外出時でも出来るだけこまめに拭くなど肌を清潔に保つ習慣が肌を疲れにくくします。
適切なスキンケアを行うように心がけましょう。