アトピー克服体験記 |
- 宮田 佳代さん(26歳)
慣れない環境で残業続きの毎日。 疲れた体にのし掛かる人間関係のストレス――。 背中にポツンと出た発疹は、 そんな生活に無理があることを教える警告信号だったのでしょう。 それを薬で抑え込み、持ち前の負けん気で頑張り続けた宮田佳代さん。 薬物依存によってこんがらがってしまった機能を、 ご夫妻の二人三脚でほどいていかれた記録です。 |
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宮田 佳代さん(26歳) | |
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首回りの皮膚がなくなり、血がにじんでいる。痛くて首が曲げられない。上半身全体と関節周りの皮膚も炎症に
覆われ、前髪で隠れているが、眉毛も半分抜けていた。 |
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- 「大きな赤ん 坊がいるようなもんですよ(笑い)」と和弘さんが言えば、「その言葉、そのまま返しますっ」と佳代さん。結婚5年目の宮田さんご夫妻に、まだお子さんはい ません。でも、家の中にはテンポのいい会話が飛び交っていそう。軽口を叩きながらも、言葉の端々、合わせる視線にお互いへの思いやりが感じられる素敵な カップルです。
立場的には主婦歴4年。でも、アトピーを克服した佳代さんの手は、ハンドクリームの宣伝に出てきそうな滑らかさ。逆に、夫である和弘さんの手が「水仕事 でもうガサガサ(笑い)」。湯治中は、料理から食器洗い、洗濯もすべて和弘さんが引き受けてくださったからです。ガサガサに荒れた手は、佳代さんに対する 愛情の証なのでした。
- 大人になるまで皮膚科とは無縁
- 「何にもないところですけど、田舎が大好きなんです」(佳代さん)
海あり山あり温泉もあり、のどかさを絵に描いたような岡山の田舎でのんびり育った佳代さんは、気持がそのまま表情に出るチャーミングな女性。カメラマンからきれいな歯並びをほめられると、「瀬戸内海の小魚パワーかも」とうれしそうに笑います。
子どもの頃、青魚が苦手だったそうですが、皮膚科に通った記憶はなく、アトピーとは無縁のまま成長。中学生のときから始まった花粉症に、市販の点鼻薬を使ったことがあるだけで、病気らしい病気もせずにすくすく育った健康な女の子でした。
「一番の原因はストレスだと思うんですよ。忙しくなり始めた頃に一カ所だけ皮膚炎ができて、そこに薬を塗るようになったのが最初なんです」
佳代さんが勤めていた飲料メーカーの地方工場に、東京から赴任してきたのが和弘さんでした。2人は結婚を前に、和弘さんは東京本社へ転勤に。佳代さんも東京本社にある別 の事業部へ移ることになったため、新婚早々別居ということにはならなかったのですが――。
- 東京へ転勤そしてストレスが次々と…
- 「田舎の工場ではある程度ペースをつかんで仕事をしてたんですけど、本社勤務になったら急に忙しくなって、遅いときは夜10時、11時。家に着いたら日付が変わってたりして……」
通勤手段も大きく変わりました。マイカー通勤から、地下鉄を乗り継いで朝晩60分、通 勤ラッシュにもまれる生活へ。
「苦痛でしたね。混んでるだけならまだいいんですけど、痴漢がメチャクチャ多いじゃないですか? それがイヤでイヤで」
生活環境も仕事の内容も大激変。目を白黒させながら頑張る佳代さんに、これでもかと人間関係のストレスがのし掛かります。配属された新規事業のプロジェ クトチームでは紅一点。企画、研修、書類の整理、そのうえ雑用はすべて女性である佳代さんに回ってくるのです。
ストレスをため込んだ人間同士、忙しくなればなるほど人間関係がギクシャクするのはよくあること。佳代さんはいつしか、職場でのストレスを和弘さんにぶつけるようになっていきました。
「愚痴を聞くだけですけどね」と笑う和弘さん。そのおっとりした大きな人間性に、佳代さんはこの後も随分救われることになるのです。