アトピー克服体験記 |
- 高岡やすこさん(31歳)
性格は、負けず嫌いの努力家。薬との二人三脚で、 仕事もプライベートも人一倍欲張って突っ走ってきた高岡やすこさん。 そんな生き方を自問自答することになったのは、 薬をやめ、それまでのように走れなくなったときでした。 そして、猛烈なかゆみに耐えながら体の声に耳を傾けた時間のあとでは、 すべてが違って見えたといいます。 やすこさんの中で、どんな変化が起こったのでしょうか。 |
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高岡やすこさん(31歳) | |
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ステロイドを断って3年が経過している。トピュア入浴を5カ月続けたのちに温泉湯治へ。
最も離脱が激しかったのは2~3年前。このときの症状は顔の湿疹と手荒れ。 |
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- 「今、すっごい解放感があるんです。旅行に行きたいと思ったら行けて、犬を飼いたいと思ったら飼える。そういうこと、ずっとできなかったから」
湯治の「卒業」が秒読み段階に入った高岡やすこさんが、夫の満(みつる)さんと一緒にオムバスを訪れたのは99年の2月10日。目をキラキラさせて現在の生活を語るやすこさんに、担当カウンセラーからのアドバイスはもうありません。
「犬もいいけど、早くお子さんをつくってください(笑い)。それだけですね、私が言いたいのは」と山田進カウンセラー。
今年の春、結婚6年目を迎えたお二人に、まだお子さんはいらっしゃいませんが、仲の良さは写 真を見ての通り。ステロイドと決別する苦しい闘いをともに乗り越えた分だけ、ご夫妻の絆は強くなったに違いありません。
何しろ、やすこさんのステロイド使用歴は物心つく前から。最初は肘の内側だけだった炎症が、小学生のときには手に集中して出るようになっていました。
- 通学スタイルはランドセルに白い手袋
- 「毎晩、ステロイドを塗って、ビニールかぶせて寝るんです。そうしないと寝てるうちに掻いちゃうから」
小学校5、6年生の頃は、手の皮膚がボロボロ。1年中、白い手袋をはめて通 学していたため、6年生を受け持った新任の先生から、「義手かと思ってた」と言われたこともあったそうです。
「花粉症も小学校4年生からずっと。アレルギーは一年中、どこかしらに出てました。血液検査もしょっちゅう受けてましたけど、普段からステロイドで抑えられてるせいか、よくわからないんですよ」
血液検査でも原因がつかめなかった病名は「湿疹」あるいは「皮膚炎」。やすこさんは、医者からアトピー性皮膚炎と診断されたことはありません。けれども、処方される薬は大抵ステロイド軟膏だったといいます。
副作用さえなければ、これほど重宝な薬はないのでしょう。原因は何にせよ、皮膚に出ている湿疹や炎症、狂おしいかゆみが、塗ればたちどころに抑えられるのですから。
- 美容師になれたのはステロイドのおかげ?
- 薬を塗り続けることの意味を知らないまま、やすこさんは未来の職業を夢見ます。あこがれは美容師。手肌の丈夫さが第一条件のような職業です。
「子どもの頃からずっとなりたくて。でも、高3で進路決めるときも言われたし、美容学校に入ってからも、学校の先生とか友だちとかから言われてましたよ。『その手では無理だ』って」
かつて、義手と間違われた白い手袋は取れていましたが、ひどい手荒れや薬を持ち歩いていることは周知の事実でした。薬はすでに生活習慣の一部。周囲の心配をよそに、やすこさんはステロイドという義手をはめたまま美容師になったのです。
「昔から手はボロボロだったし、指紋もなかったぐらい。だから、美容師になって特に悪くなったわけじゃないんです。ただ、顔にまで出るようになったのは大人になってから。薬も頻繁に塗るようになって、どんどんひどくなって……」
一日中立ちっぱなしで働き、閉店後は技術を磨くための自主練習を。週1日の休日が、接客や新しい技術を習得するための講習会でつぶれることもザラです。
「ストレス発散」は仕事のあと、寝る間を惜しんで遊び、翌日は睡眠不足のまま仕事場へ。若さに任せ、薬に頼ってやすこさんは、これでもかと体に無理を強いる生活を続けていったのです。