アトピー克服体験記 |
- 柳沢 朝美さん(31歳)
喘息で入退院を繰り返して成長した柳沢朝美さん。 死線をさまようような発作を抑えるためには、薬に頼らざるを得ませんでした。 そうして何度も命拾いをした朝美さんに、薬に対する抵抗感はありません。のちに発症したアトピーにもステロイドを丹念に。 大きな回り道のあとで、なぜ薬を断ち、どうやって本物の健康を取り戻したのでしょうか。 |
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柳沢 朝美さん(31歳) | |
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ステロイドを断って3カ月。顔全体が真っ赤に腫れ上がり、かゆみも強い。首周りは赤黒く変色し、手足にも発疹が出ている。離脱はまだ序の口。
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- 「子どもの頃は病院にいる方が長かったですね。親は面会時間しかいないから、いつも看護婦さんと」
喘息の発症は生後8カ月。それから中学3年まで、朝美さんは大学病院の常連でした。発作を起こしては病院へ運ばれ、点滴を打ったり入院したり。朝美さん自身に小さいときの記憶はありませんが、母親の立子さんには鮮明に焼きついています。
「完全看護ですから、付き添ってることができないんです。初めて付き添いなしで入院させたのは3歳ですから、つらかったですよ。エレベーターのところまでついて来てわぁわぁ泣くのを引き離して」(立子さん)
退院したその日のうちに発作を起こし、病院へ逆戻りということも。入院期間は1カ月から8カ月に及びました。
「本当に危ないときもありましたからね。先生も看護婦さんも、『できるだけのことはやりました』って」(立子さん)
医者が見放すほどの発作を起こし、ようやく一命を取り留めるのです。ご両親には医者や薬が神様に見えたことでしょう。
「ステロイドを飲んでると安心なんですよ。発作が起きないし、飲んだらすぐ良くなるから。それが頼みの綱でした」(立子さん)
気管支拡張剤に鎮静剤に抗ヒスタミン剤、そしてステロイドの点滴、内服、吸入……。悪くすれば死に至ることもあるのですから、薬は命綱です。薬と縁の切れない生活を続けるしかありません。
- ステロイドが喘息を引き出した可能性も
- ただ、ちょっと気になることも。実は、朝美さんが初めてステロイドを使ったのは、喘息の発症より5カ月前のこと。3カ月健診で保健婦さんから教えられ、乳児湿疹にフルコートを塗った時期があるのです。
「そのときはステロイドってこと知りませんから、薬局で買って、何回か塗ったらきれいに治ったんです。そのあと喘息が出ましたから、『外へ出すべきものを中へ押し込んじゃったのかもしれない』って、あとになって小児科の先生に言われました」(立子さん)
因果関係はわかりません。が、乳児湿疹と入れ替わるように喘息が発症。それから大人になるまで、朝美さんの肌には何の問題もなかったのです。もしかしたら、喘息治療のステロイドが、アトピーを内側から抑え込んでいたのかも。
年に何カ月も病院で過ごすのですから、勉強は遅れます。「出席日数は足りないけど、どうしますか」「このまま上の学年に上がると大変ですよ」。担任の先生は心配しますが、ご両親はみんなと一緒に進級させることに。
「それどころじゃないんです。『体の方が大事ですから、無理に勉強させなくていいです』って。思い出しますよ、先生のムッとした顔。でも、自分の子どもが大事ですからね。親しか護ってやれないからね」(立子さん)