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アトピー克服体験記

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  • 大森太郎くん(6歳・幼稚園児)


早寝早起き。野菜は自家栽培。調味料にもこだわって、できる限りの自然食を実践。病気だって安易に薬に頼らずに自分が持っているはずの力を最大限に引き出して自然に治したい──、ナチュラル志向の大森さんご一家。長男・太郎くんは赤ちゃんの頃にかなり激しい状態を経て、自宅温泉湯治でピカピカツヤツヤな肌を手に入れました。1歳半でほぼ症状が消え、3歳ではご近所イチの元気っ子に。妹・花ちゃんにも出たアトピーがあとちょっと残っていますが、ご一家には克服の確信がみなぎり、明るさ一色です。

生後1カ月で乳児湿疹に。非ステロイド軟膏を用いるが湿疹は退かず、3カ月で、アトピー性皮膚炎と診断される。薬を断ち、自宅温泉湯治を開始。黄色ブドウ球菌による、かなり激しい感染症と、強い食物アレルギーから2カ月間入院。入院中も湯治を続ける。強烈そうだったかゆみが1歳を過ぎた頃には落ち着き出す。
岡山県
大森太郎くん(6歳・幼稚園児)
  • 「ばあちゃんが初めて太郎を見たとき、なんじゃこりゃって泣きようもんね」(お母さま・光子さん)。「そうそう、だからできるだけ実家にも行かんようにしていたよな」(お父さま・芳郎さん)。  

    生後1カ月頃から徐々に赤みを増してきた太郎くんの乳児湿疹。「ばあちゃん(芳郎さん方)」は「なんで薬を使わんの?」「はよ病院へ連れて行かんと」と何度もおっしゃったそうです。  

    昔からできるだけ薬には頼りたくないとの考えで育ってきた光子さんと、薬には特に抵抗のなかった芳郎さん側。太郎くんの治療に関し、ご夫婦間で言い合いになることはなかったそうですが、ご実家との板ばさみに芳郎さんが苦心した日々は少なからずあったよう。もちろん、「太郎くんの状態を心配して」という根っこの部分がみな同じ思いだったことは言うまでもありません。
  • 「アトピーは一生治らない」って…

  • 1カ月検診で乳児湿疹と言われていた太郎くん。ステロイドが必要だと医師からは告げられていますが、光子さんはそれを拒み、それならばと出された非ステロイドの軟膏を、赤みの出ていた頬に頭に塗っていたそうです。  薬を使っても症状が退くことはなく、逆にますます顕著になった3カ月頃には「アトピー」と診断され、「これはアトピーなので一生治りません」とまで言われてしまいました。  

    始まったばかりの「一生」に添えられた酷な言葉にどれほど人は傷つき、不安に陥るか、その医師は考えたことがあるでしょうか。患者の反応をどう見ているのか気になるところです。 「一生治らないアトピーって何?」、それを調べるために図書館に向かった光子さんは、マンガ仕立てでアトピーを説明する『おしえて!アトピー』(スコラ社刊)を見つけました。 "治らないはずのアトピー"を治せて輝く肌を見せる子どもたちの写真に見た希望は、あの医師の言葉を心の隅に追いやったことでしょう。「太郎よりももっとひどい子が自宅温泉湯治できれいになっているので、すぐにこの方法を始めたいと思いました」(光子さん)。

    「アトピーは一生治らない」は、「アトピーは(薬では)一生治せない」との意味をもって語られたのなら合点がいきます。  ご一家は当時、芳郎さんの転勤で東京にお住まいでした。でも、湯治を始めるなら実家でと思った光子さんは、東京に芳郎さんを残し、岡山へ。 湯治は、衣装ケースを湯船にして、そこに源泉を満たして行われました。1日2回、1回は10分からと、まだ小さな体に負担のかかりすぎない程度に始められていきました。しかし、いつの間にかがんばり過ぎて体力を消耗していたこともあったようです。  

    太郎くんは、顔から、頭から汁を噴き出し、服も毛布も、触れるものすべてを滲出液でベタベタにしていきました。寝ている間に出た汁は、パジャマやシーツにはりついて、簡単に体からはがれず、お湯で湿らせて、あるいはオリーブオイルを塗って、そーっとはがさなければなりませんでした。掻き壊しも手伝って血だらけの赤ちゃん。「朝いちばんの顔はすごかったです」と。 「日中も、目を離すと血だらけになるので常に抱っこしていました」。温泉水で常にペタペタと汁を拭きながら、湯治する以外は一日中、ただただ抱っこしていたようだったと振り返ります。「家事? どうしていたんでしょうね。実家でしたから、母がしていてくれたのかな。その頃の記憶、もうイヤで…」。これ以上あの頃を話すと泣いてしまう。こらえるような表情でウンウンと頷く光子さんです。  

    夜はまさに暗闇でした。かゆいから掻く。掻くと血と汁が噴き出る。痛くなる。泣く。太郎くんは少しも眠れていないようです。掻かなければ眠れるのかもと、布で体をグルグル巻きにし、手をしばるようにして寝かせたこともあったそうです。強いストレスを与えていたのは承知の上。でも、「放っておけなかったんです。これ以外に方法がなくて」と光子さん。その行動は誰にも責められるものでは決してありません。手が動かせず、掻こうにも掻けなくなって、太郎くんは少し眠れたよう。これが光子さんの救いとなりました。




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