アトピー克服体験記 |
- 藤原淳二さん 陽子さん ゆとりちゃん(7 歳) ゆうわちゃん(5 歳)
彼と彼女はアトピー同士。恋人時代に、彼女は雑誌記事でステロイド剤の怖さを知り、自 分の薬だけでなく、彼の薬も捨ててしまいます。そこから二人で自宅温泉湯治に励み、最 悪期を九州HRCで過ごし、体力も財力も底辺の状態で入籍。その後、アトピーを持って 生まれてきた子どもたちを守るためにも、住・食環境を追求し、なんと! 理想の「保育 園」を自宅で開園します。園児ゼロでスタートした「藤原さんち保育園」は、4年目の今 では満員御礼状態に。家族全員アトピーも克服できて、今、大きな幸せの中に! 淳二さん、陽子さんともに物心ついたときからのアトピーで、薬使用歴もともに20 年近く。 淳二さんは喘息でステロイドを内服もしていたため、何度も離脱を経験。陽子さんは、夫や娘への心配から、調子を崩しやすかった。 |
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藤原淳二さん 陽子さん ゆとりちゃん(7 歳) ゆうわちゃん(5 歳) |
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保育士をめざし、乳幼児教育を学ぼう
と思った淳二さん。介護福祉士をめざし、
社会福祉を学ぼうとした陽子さん。それ
ぞれの夢を胸に、ともに入った北海道の
保育科のある短大でお二人は出会います。
それが今から15年前のこと。二人は夢に
向かって勉強する毎日のなかで、互いに
惹かれ合っていきました。
それぞれが物心ついたときからのアト ピーで、でも、お互いがアトピーだと知っ ても特にどうということはなかったとい うお二人。「同じような、丸い容器に入っ た薬を持っていて、『お前のそんなにちっ ちゃいの? 俺の薬のほうがデッカイぞ』 みたいな薬自慢をしたことはありました ね」(淳二さん)「薬で抑えられていたの で、アトピーをつらいと思うわけでもな く、なんとも思っていませんでした」(陽 子さん)
保育の仕事、介護の仕事にそれぞれが 就き、札幌で働くことになった二人は同 棲を開始。仕事を始めると陽子さんの症 状は、薬では抑え切れないものになって いきました。 「老人保健施設での仕事では、手を消 毒する回数がとても多いんです。それで 指にアトピーがハッキリ出てくるように なりました。皮膚科に行くたびにステロ イドのランクが上がり、ついに最高ラン クのステロイドを塗ったくっても効かな くなりました。痛くて困りました」(陽 子さん)
なんとも思わなかったアトピーが"困 る"ものになってきたそんな頃、陽子さ んは雑誌『アトピーを治したい!』に出 合います。
- 二人にズレて訪れた離脱期
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ステロイド剤がどういう薬剤であるか
を雑誌で知った陽子さんは、淳二さんの
分もまとめて、独断で薬を捨ててしまい
ました。
「当たり前に薬を塗ろうとしたら、『投 げた(北海道弁で『捨てた』の意味)から』 と言われて愕然としました。僕は、薬で 抑えられているんだからそれでいいじゃ ないかという気持ちだったんですが⋮」 そこから、生活も、体も大きく変化を していくことに。想像もしていなかった 日々が待ち受けていた、そんなこの先の 10年を二人は歩み出したのです。
99年1月末、そろって神奈川のオムバ スへ。陽子さんはすでに訪れていた離脱 にフラフラした状態で、かたや淳二さん は離脱到来前。子どもの頃から重い喘息 もあり、内服のステロイドを多用してき たため、体内に薬の影響が残り続けてい たのかもしれません。
さて、自宅温泉湯治開始後も陽子さん は、職場の人たちから「大丈夫なの?」 と言われるほどの状態で仕事を続けてい ました。なんでも、3年は仕事を辞めな いと決めていたのだそうです。施設に3 年勤続することで、夢だった介護福祉士 の資格が取れる権利が得られるから。だ から無理を承知で湯治と仕事を両立させ ていたのです。
眠りも整わない毎日でしたが3年間を 頑張り通し、退職。仕事を辞めると眠れ るようになっていき、そこからは順調な 回復を見せ始めています。
しかし、入れ替わるようにして淳二さ んが最悪期へと突入していきしまた。保 育士として歩み出して3年、ステロイド を断っても覚悟したほどの波が来ないま まに過ごせた3年、あと数年仕事の経験を積んで男としての自信がついたら陽子 さんにプロポーズしようと思い描いてい た矢先でした。
「眠れなくなっちゃって」(淳二さん)。 調子の崩れは「不眠」という形で訪れま した。「少しの睡眠もとれない感じでした。 それでも朝から仕事に行かないとならな いし、一気に皮膚状態が噴き出しました」 そこから「カポジ水痘様発疹症」(ヘル ペスの重症型)を発症し入院。抗ウイル ス剤などで治療し、カポジは落ち着いた のですが、不眠は依然残ったそうです。
「睡眠導入剤を飲んで、それで眠れはす るんですけどかゆくて、気づいたら、半 分眠りながらかゆみを取ろうとしてシャ ワーを浴びたりしているんですよ」(淳二 さん)「夢遊病みたいになっちゃって⋮」(陽 子さん)
不眠から夢遊病的な行動を起こし、精 神的苦痛に苛まれ、加えて、全身離脱で、 保育士なのに子どもたちと手もつなげな いーー。俺っていったい何なんだ? 自 己否定する毎日に「逃げ場がない! 怖 い!と思いましたね」(淳二さん)