アトピー克服後のNew Life/My Work |
- 大庭明子さん(57 歳)
大庭明子さんのアトピー克服体験記が本誌『あとぴナビ』に掲載されたのは2008年2月のことでした。
子どもの頃から30年以上使い続けたステロイドを断って向き合った激しい離脱の話は衝撃的ながらも、腹をくくって取り組んだ湯治、かえりみた食生活、うつ病を乗り越えた話、化学薬品を排除した生活、睡眠の取り方など、たくさんの経験を語られ、そこには大庭さんのやさしくてたくましい人柄がにじみ出ていました。大きく、力強く励まされた読者も多かったことでしょう。
あれから6年。アトピーはもう大庭さんを悩ませていないか、今はどうお過ごしかを尋ねてみました。
- 一時、生活習慣が崩れて手の甲がジュクジュクに
「版画家 大庭明子」のキーワードでインターネット検索をすると、関連記事がずらり。大庭さんは、著名な版画家です。
この4月も中旬から個展の開催が予定されているのだそう。寝食を忘れるほどに作品作りに没頭されているのでは?と思いきや、
「ううん、違うんです。去年、一昨年かな、ある雑誌の表紙を1年間、木版画で作ったんですけれど、それが12枚あるので、もう作品はそろっているんです」とのお答え。
何日までに何点、作品を仕上げなければ!といったギリギリの仕事ではなく、「無理をしない自分のリズムで今後は創作を続けていきたい」とおっしゃいます。
「どこかで無理をすると、本来の自分以上に自分をよく見せようとしてしまって、力が入り過ぎて苦しくなっちゃうから」と柔和なお声。無理をするあまりに、食事や睡眠、そして休息をないがしろにしてしまうと、一度治せたアトピーがまた健康をむしばみにくることも実は経験済みでいらしたのです。
それは、2009年7月のことでした。同居されているお母さまが大腿骨骨折! 夜中に救急車に乗り込んでからは生活が一変してしまいました。
当然のことながら、お母さまの看病が生活の中心となります。病院への送迎・付き添いに時間が取られ、不規則な時間に食事をとりながら、「欲張って入れていた」という大きな仕事もこなし、毎日がいっぱいいっぱいに…。
そんな生活が続いたある日、「尋常ではない手荒れ」が大庭さんの手の甲を覆ったといいます。たちまちのうちに、やけどのように。
「オムバスに相談しました。結局のところ、生活習慣を正すしかないんですよね。この症状をお医者さんにもし診せに行ったらステロイドが出されることも明らかでした」 乱れてしまった生活への警告が肌に出ている。そうと理解できても、怠惰や遊びや身勝手で生活が乱れたわけではありません。すぐには改善できない状況をどうにかやり過ごすしかありませんでした。
日常は、思い通りに進められないこともある││。そのときに学んだ大庭さんは、できることは前倒しして余裕をもって進め、でも、無理は禁物と気をつけて、自分をコントロールしていくようになりました。
「ギリギリを続けていくと、燃え尽き症候群みたいになっちゃう。全部をやろうとして、いっぱいいっぱいになってしまうと、心にも体にも負荷がかかりますよね」
アトピーを克服した!と一度晴れやかな気持ちを手に入れた後で対面してしまった手の甲のジュクジュク。
「そこから行きつ戻りつしながら、生活が整うようになって、いつの間にか治まっていきました」