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ステロイド剤とプロトピックが身体にもたらす弊害


  • 木俣肇クリニック院長・医学博士
    京都大学医学部卒業後、米国のUCLAに3年間留学しアレルギーの研究に従事。帰国後、ステロイドが、アレルギーを媒介する蛋白であるIgE産生を増加させることを海外の研究者と違う実験系で見出し、海外の免疫学雑誌に発表。IgE産生調節機構に関与している多数の海外の専門の研究者からの一連の発表で、ステロイドによるIgE産生増加は免疫学者の常識となった。



  • ステロイド剤は、皮膚のバリア機能を低下させる
  • 皮膚のバリア機能を高める抗菌ペプチド

    私たちの皮膚や汗の中には、抗菌ペプチドと呼ばれるアミノ酸の結合体があります。皮膚にはデフェンシンやカセリシジン、汗の中にはダームシジンという抗菌ペプチドが含まれています。 
    抗菌ペプチドには細菌やウイルスの侵入を防ぐ生体防御の働きがあります。したがって、抗菌ペプチドが多いほど皮膚のバリア機能は高まるといえるでしょう。 
    慢性的なアトピー性皮膚炎の皮膚は、表皮のセラミド量が少なかったり、頻繁に掻き壊すことなどで、バリア機能が低下して感染症などにかかりやすい状態です。しかし、そのような状態の皮膚ほど抗菌ペプチドは増えやすい傾向があり、健康が損なわれた皮膚のバリア機能を補完する役割を果たしていると考えられます。

    ステロイド剤をぬると抗菌ペプチドが減ってしまう

    ところが最近の研究によって、ステロイド剤をぬることで、皮膚の抗菌ペプチドが著しく減少することがわかりました。下のグラフをご覧ください。各棒グラフは左から、「健常な皮膚」「慢性的なアトピー性皮膚炎の皮膚(薬物治療は行っていない)」「ピメクロリムス(免疫抑制剤)を使用した皮膚」「ケナコルトA(ステロイド剤)を使用した皮膚」「リンデロンV(ステロイド剤)を使用した皮膚」の抗菌ペプチド(デフェンシン)量を測定したものです。 
    薬物治療を行っていないアトピーの皮膚(棒グラフB)には、健常な皮膚(棒グラフA)の2倍以上の抗菌ペプチド(デフェンシン)があります。この結果からも、薬剤治療を行っていないアトピー性皮膚炎の皮膚には、抗菌ペプチドが多いことがわかります。しかし、棒グラフCの※ピメクロリムス(免疫抑制剤)をぬった皮膚では抗菌ペプチドが半減し、棒グラフDのケナコルトA(やや弱いランクのステロイド剤)、棒グラフEのリンデロンV(強いランクのステロイド剤)とステロイドのランクが強くなるほど抗菌ペプチドは激減しています。


  • ステロイド剤の連用で感染症にかかりやすくなる

    この結果から、ステロイド剤の連用により、皮膚の防御機能が失われる傾向があることがわかります。アトピー性皮膚炎の皮膚は感染症にかかりやすい傾向がありますが、これは掻き壊しなどによる皮膚のバリア機能の低下が主な原因です。この研究では、バリア機能が低下した皮膚を補助しようとする抗菌ペプチドまでもが、ステロイド剤の使用によって減ってしまうことが示されています。ステロイド剤をぬることによって、皮膚のバリア機能はますます弱まり感染症にかかりやすくなる一因となっているのです。






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