ステロイド剤との正しい向き合い方 |
- ステロイド剤は 長期連用しても平気な薬?
- ------絶対に長期連用してはいけません
今の皮膚科医のアトピー性皮膚炎に対する治療方針が、ステロイド剤などによる薬物治療にあるため、その連用に対しては、「専門医の指導のもとであれば、長期連用しても副作用の心配は少ない」と表現しています。
しかし、実際には、ステロイド剤によるマイナスの影響は、皮膚科医で完全にコントロールすることができず、そのため、ステロイド剤による「被害」を受けたと考える患者が多くなるわけです。
なぜ、コントロールできないか、というと、皮膚科医はステロイド剤によるリスクを、ステロイド剤が持つ薬剤としての副作用に主眼を置いているため、ステロイド剤が生体に間接的に与える影響の対処が十分でないことが言えます。
では、アトピー性皮膚炎に対してステロイド剤の長期連用はどのような影響を与えるのでしょうか?
- 感染症を誘発しやすい
- ステロイド剤を使用しているアトピー性皮膚炎患者は、免疫力が低下するわけですから、そのほとんどが感染症にかかりやすくなるということになります( 電子版13ページ参照)。 季節的な変化や体力低下を感じた時に症状の悪化を繰り返すかたは要注意です。
- ステロイ剤がアトピー性皮膚炎を増悪させる
- 免疫が関係するアトピー性皮膚炎の原因は、主にIgEが関わりますが、IgEには3つの受容体があります。その一つがガレクチン3(Gal3)と呼ばれるもので、この受容体が関係することで、アレルゲンなどがなくても、IgEが増強されることが分かっています。
健康な人はB細胞の表面にIgEの受容体を持たないs Ig E - B 細胞があるのですが、アトピー性皮膚炎の方は、IgEの受容体を持つs IgE+B 細胞を多く持っていることが分かっています。
sIgE -B 細胞をsIgE+B 細胞に変化させるのには、サイトカインの一つであるIL - 4(インターロイキン4)が関与しているのですが、ステロイド剤は、このIL - 4を増やす働きも持っているため、長期連用することで、体内のIgEを増強させ、アトピー性皮膚炎の因子を悪化させてしまうことがあるのです。
現在の皮膚科医が、こうした生体への間接的な影響を監視しながら治療を行うことはありません。なぜなら、感染症による影響も、炎症自体はステロイド剤でコントロールすることができ、また、アトピー性皮膚炎が悪化した場合も当然、ステロイド剤で炎症をコントロールできてしまうからです。
しかし、感染症の原因、そしてアトピー性皮膚炎を悪化させている原因がステロイド剤にあった場合、その使用は、表面上の炎症を抑えているだけであり、原因を悪化させている以上、徐々に薬物の使用頻度が増え、長期連用に至りやすくなる、という悪循環を生むことになります。
そうなると、ステロイド剤が持つ直接の副作用(皮膚が委縮するなど)も現れやすくなり、より皮膚のダメージが蓄積されていくことになります。