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- 黄色ブドウ球菌とアトピー性皮膚炎
- 今年の4月、アトピー性皮膚炎の治療法が大きく変わる可能性を示唆する研究発表がマスコミ等で報じられ、話題になりました。米国衛生研究所(NIH)と慶応義塾大学の共同研究による「アトピー性皮膚炎は皮膚の異常細菌巣が引き起こす」という論文です。
4月22日付の日本経済新聞の記事には、「炎症を起こした皮膚には、『黄色ブドウ球菌』と『C・bovis』という2種類の細菌だけが目立った。健康な皮膚には様々な種類の細菌がいる。特定の菌に偏ることによって、アトピー性皮膚炎を発症している可能性があるという」と書かれています。
人間の体には、数多くの菌が共生しています。その種類は数百、数は数千兆にもおよぶといわれ、様々な働きを持つ多様な菌のバランスが人間の健康に影響を及ぼしています。皮膚にも様々な菌が存在し、皮膚表面の菌の多様性は腸内をしのぐことがわかってきたそうです。
皮膚には多様な菌が住み着き、それらのバランスのよい共生関係が健康な皮膚の状態をもたらしています。ところが、アトピー性皮膚炎が発症した場合は、皮膚表面の菌の種類が著しく減少し、その過半数が黄色ブドウ球菌によって占められます。アトピー性皮膚炎が発症した皮膚に黄色ブドウ球菌が異常繁殖することは、昔からわかっていたことです。しかし、黄色ブドウ球菌がアトピー性皮膚炎にどのように関わっているのかは、これまで解明されてきませんでした。