「グリチルリチン酸」が配合されていないかをチェックしましょう! |
- 最近、グリチルリチン酸についてのご質問を多くいただくようになりました。特に、スキンケアアイテムだけではなく、シャンプーやボディソープなど、洗浄アイテムに配合されているケースも多くなっています。グリチルリチン酸とは、どういった役割と働きがあるのか、またどういった点に注意が必要なのかを説明しましょう。
- ● 増えている「グリチルリチン酸」配合のアイテム
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「低刺激の自然派のスキンケアアイテムに変えたら、肌に赤みが目立つようになったのですが……」こういったご質問をいただいた際、使用されているスキンケアに配合されている成分を見ていただくと、「グリチルリチン酸」「甘草」「カンゾウエキス」などの名称で成分が含まれるケースが多くあります。この成分はいずれも、カンゾウ属に属する植物から抽出される成分です。
漢方では、もっとも基本的な薬草とされている「甘草」が代表的なものですが、生薬として用いられる甘草は、グリチルリチン酸を2・5%以上含むものという規定が、日本薬局方で定められています。
このグリチルリチン酸は、強い抗炎症作用を有しており、その構造式は、副腎皮質ホルモンのひとつである「塩類代謝ホルモン」と類似した構造式を持っています。
- ●副腎皮質ホルモンとは?
- アトピー性皮膚炎に使われる薬剤として有名な「ステロイド剤」。別名「副腎皮質ホルモン剤」と書かれているのを目にされたことがある方は多いのではないでしょうか?
副腎皮質ホルモンとは、単一のホルモンではなく、腎臓の上に乗っかっている「副腎」という臓器から産生される主に「糖類代謝ホルモン」「塩類代謝ホルモン」「性ホルモン」の3つのホルモンの総称です。
まず、糖類代謝ホルモン(糖質コルチコイド)ですが、この構造式を化学的に再現したのが、アトピー性皮膚炎の方が使用する「ステロイド剤」です。糖質代謝ホルモンには文字通り「糖質の代謝」という働きの他に、ストレスや炎症を抑える働きがあります。ヒトが肉体的や精神的な強いショックを受けた際、そのショックから身を守ってくれるのがこの糖類代謝ホルモンの抗ストレス作用で、交通事故などでショック状態に陥った際にステロイド剤を注射されるのも、この抗ストレス作用を期待されてのものです。
そして、もう一つの薬理作用として持っている働きが「抗炎症作用」です。体内の免疫活動を抑制することで炎症を抑える働きを有しており、アトピー性皮膚炎では「炎症↓痒み」の経路を断つために使用されます。
そして、性ホルモンとしては主に男性ホルモンが分泌されることが分かっています。
- ● グリチルリチン酸は、なぜ副作用があるのか?
- 最後の塩類代謝ホルモン(鉱質コルチコイド、塩類コルチコイド)も文字通り、体内のナトリウムやカリウムなど、塩類の代謝に関わるホルモンです。薬理作用としては、糖質代謝ホルモンと同様に、免疫抑制による抗炎症作用を持っています。
そして、この塩類代謝ホルモンと類似した構造式を持っているのが「グリチルリチン酸」なのです。実際、グリチルリチン酸を長期連用することで、塩類代謝ホルモンの過剰症と同様の影響が見られることが分かっています。
その影響は古くから確認さており、30年以上前に厚生省(現在の厚生労働省)から通達(薬発第158号 昭和53年2月13日厚生省薬務局長「グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて」)が出ています。
この通達内においては、「量の違いはあるにしろ、約1カ月で、体内の塩類コルチコイドが過剰に分泌されるアルドステロン症と類似の症状である疑アルドステロン症が現れた」と書かれているように、グリチルリチン酸が、塩類代謝ホルモンと類似の構造式を持つことにより類似の効果と副作用が現れることが確認されています。
なお、この通達は漢方など医薬品の取り扱いについてのものですが、化粧品などスキンケアアイテムに配合されているグリチルリチン酸も、配合割合は医薬品ほど高くはないものの、同様の「効果」と「副作用」を示すことがあります。