喫煙により高まるアトピー発症のリスク |
- ● いまだにはっきりしない喫煙とアトピーの関係
- J T(日本たばこ産業株式会社)
が行った「2016年全国たばこ喫
煙者率調査」によれば、日本の成人
男性の平均喫煙率は
29.7%、成人
女性では9.7%でした。世界的な
禁煙傾向の中で日本人の喫煙率も減
少し続けていますが、受動喫煙を含
めて日常的な喫煙曝露(タバコ煙の
吸入)の機会が多い人にとっては、
喫煙のアトピー性皮膚炎への影響が
気になるところです。
喫煙曝露とアトピー性皮膚炎の関 連については、これまで多くの調査・ 研究が行われてきましたが、いまだ にはっきりとした結論は出ていない 状況と言えるでしょう。タバコがア トピー性皮膚炎のリスクを高めると いう報告もあれば、ほとんど関連が ないとする報告もあり、いま一つ釈 然としない感があります。
そんな状況の中で、今回ご紹介す る愛媛大学の研究成果「出生前後の 喫煙曝露と子のアトピー性皮膚炎と の関連」は、妊娠中の喫煙が幼児の アトピー性皮膚炎発症のリスクを高 める可能性を示したものです。この 研究の概要を、統計データを交えて 説明していきましょう。
- ● 出生前後の喫煙曝露を より詳しく調査する
- 愛媛大学が主導する共同研究チー
ムによる「九州・沖縄母子保健研
究」は、九州・沖縄地区の妊婦さん
1757名が参加した大規模な疫学研究です。
妊娠中・出生時・4カ月時、1歳 時、2歳時と長期間にわたる調査を 行い、2歳時には「過去1年の間に アトピー性皮膚炎の症状が出たこと があるか?」「2歳までに医師によ るアトピー性皮膚炎の診断を受け たことがあるか?」を追跡調査して 1354組の母子が解析対象者とな りました。
一般的に、妊娠中に喫煙する母親 は出産後も喫煙を続けるケースが多 いものです。そのため、出生前後の 喫煙曝露が子のアトピー性皮膚炎に 与える影響を、出生前・出生後に分 けて解析することは困難でした。 しかし今回の研究では、妊娠中か ら母親と生まれた子を追跡調査した ことで、出生前後の喫煙曝露の状況 を細かくグループ分けして調べるこ とに成功。研究対象は4つのグルー プに分類されました。
母親をはじめ同 居家族に喫煙者がいないため、出 生前後の喫煙曝露が全くないグルー プ。
妊娠中のみ母 親が喫煙していて出生後の受動喫 煙がないグループ。妊娠、出産を 機に母親が禁煙したということで す。
妊娠中の母親 の喫煙はなく、出生後に家族の喫煙 による受動喫煙があったグループ。
出生前後の両方に おいて喫煙曝露があったグループと なります。