ストレスとアトピーの関係も一目瞭然!「病は気から」を科学する |
- 炎症は体を守る免疫反応
- アトピー性皮膚炎の湿疹・かゆみは、皮膚の炎症によるものです。かゆみは辛いものですが、炎症は本来体を守ろうとする免疫反応により起こります。例えば、蚊に刺された際、体は蚊の唾液を異物と取材・文/末村成生イラスト/佐藤加奈子監修村上正晃Masaaki Murakami北道大学遺伝子病制御研究所所長大学院医学研究科分子神経免疫学分野 教授、医学博士ストレスとアトピーの関係も一目瞭然!「病は気から」を科学するみなし排除します。免疫の働きで刺された部分の血流を増やし、免疫細胞が集まって炎症を起こすことで、異物を処理しているのです。
蚊に刺された場合は、免疫機能が正常に働くと、炎症はそのうち収まりかゆみもなくなります。ところが、免疫の働きをオフにできないまま低レベルの炎症が長く続くことがあり(慢性炎症)、そんな場合は病気の発症につながってしまいます。
- 炎症の慢性化が病気をつくる
- 本来は体を守るはずの炎症という働きが、低レベルで慢性的に続いてしまう。このことが、がんやメタボリック症候群などの様々な生活習慣病、自己免疫疾患、アルツハイマーやパーキンソン病などの神経変性疾患、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患といった多様な病気の引き金となります。つまり、ほとんどの病気は「炎症」に関わっているということです。
病気になる仕組みを解明するために、「いかにして炎症が生じるか」を研究してきた村上教授らの研究グループは、2008年に「炎症回路」のメカニズムを解明しています。炎症回路とは、炎症が慢性化するしくみを分子レベルで解明したものです〈図A〉。
この発見の意義は、がんや関節リウマチなど慢性炎症疾患の新たな治療法の可能性を広げたことにあります。