ステロイド治療の「メリットゾーン」と「デメリットゾーン」(1) |
- メリットゾーンと デメリットゾーンの定義
- 当然薬には「作用」と「副作用」があります。ステロイド軟膏には優れた「抗炎症効果」という作用があります。一方、「皮膚が薄くなる(掻き壊れやすくなる)」、「毛細血管が拡張する(赤くなる)」、「刺激に過敏になる(悪化しやすい)」、「しわが増える(皮膚の劣化)」、「色素沈着(黒ずむ)」などの副作用もあります。
また瞼周辺の皮膚または広範囲に長期間塗ったりするとまれに「白内障」、「緑内障」を発症する場合があり、全体的に大量、または長期の使用、密封法(塗布後ラップで覆う)を行うと、下垂体・副腎皮質系機能を抑制することがあるので注意すること、と説明書きには書いています。
つまり、「作用の恩恵が大きい期間がメリットゾーン」で「副作用の害が作用の恩恵を超えて大きくなるとデメリットゾーン」 と言えます。 病院に行き、アトピー性皮膚炎と診断を受け、もらったステロイドを塗って、そのまま治ったという方が多いのも事実です。その方はメリットゾーンで終了した方です。しかし一方で何年使っても治らない、明らかに悪くなっていると苦しみ悩む方が多いのも事実です。今ここで、客観的に自分の立ち位置を確認することは、将来の自分を左右する重要なことだと言えます。
- デメリットゾーンを超えた患者も多くいた1980、90年代ほとんどが、本人も家族も知らないうちに陥っていた
- 1980年以降に多く見られた重症のアトピー性皮膚炎の患者は、2002〜3年頃から減少傾向に向かいました。これはあとぴナビ調査でも、皮膚科医の取材でも同じような見解なので、ほぼ間違いないと言えます。理由の一つは、2000年に初めて日本皮膚科学会がアトピー性皮膚炎治療ガイドラインを作成しましたが、その後改定を重ね、2008年、2009年には新しい内容も追加したアトピー性皮膚炎診療ガイドラインとなりました。
その成果もあってそれまでは各医師の裁量に任せた治療は、ステロイド治療を第一の基本治療と位置づけたうえで、次第にエビデンスに基づきその使用方法(量や塗り方)なども厳格に決められていきました。よって患者の使用量は以前と比べて減る結果となり、医師に指示された使い方を守るようにもなったことが挙げられます。
それまでステロイドの使用方法においては医師の裁量まかせでしたので、当時は一度に10本、20本の軟膏をもらうことも多く、読者の取材先で小さな段ボール箱、お菓子の缶一杯のステロイド軟膏をよく目にしたものです。今では考えられらないような使用方法ですが、小さいころから大量に使い続けることでデメリットゾーンをも超えてしまい、もうこれ以上副作用に耐えられないといった重症の患者が1980年頃を境に数多く生まれたという事実があります。
減少したもう一つの理由としては、ステロイド剤の副作用が社会問題になったこともあり、若い医師などが中心になり、極力薬物に依存しないで、自然治癒力に重心をおいた治療をしようとする動きが盛んになったこともあげられます。。また、インターネットの普及により、それら医師の存在、考え方に触れることにより、使用するにしても患者側が用心して使用するようになったことも大きな要因と言えます。