かゆみのメカニズムとアトピー |
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- アトピー性皮膚炎のかゆみは、他の皮膚炎のかゆみよりも強いといわれています。
実際にアトピーの方々がつらいと訴えるのもかゆみです。でもいったい、かゆみはどうしておこるのでしょう。 - 今月号では、アトピーのかゆみがどうして起きるのか、高森先生にお伺いしました。
- 1.制御できないかゆみはどこから来るのか?
- かゆみとは一体、どこからくるのでしょうか。
アトピー肌と普通の肌の違いはあるのでしょうか。
- ■過剰に働く防衛反応
- アトピー性皮膚炎(以下「アトピー」と略す)の人はたくさんの悩みを抱えていますが、その中でも特に辛いのは「かゆみ」です。眠れないほどのかゆみが起こり、掻いてはいけないと知りつつもつい掻いてしまうと、余計にかゆくなって、血が出るまで掻いてしまったり……。「かゆみさえなければ」と願うのは、アトピーの人にとっては共通の思いでしょう。
かゆみに関しては、最近になりたくさんのことが医学的に明らかになりました。たとえば、かゆいという感覚が皮膚のどこで感じられているのかが、アメリカの皮膚科医シェリー医師によって解明されました。かゆみを起こす物質を含んだ熱帯植物のトゲを皮膚に刺してゆき、どの深さに達したときにかゆみが発生するかを調べたのです。すると、一番強くかゆみを感じる場所は、表皮と真皮の境界部分であることがわかったのです。
気温の変化や痛みを感じることは、生きていくために必要です。実は、かゆみを感じるのも人間が生きていくために必要な感覚で、肌に異物が付着した時にそれを払いのけようとする反応だと言われています。鼻に異物が入った時にくしゃみがしたくなるのと同じ反応です。アトピー肌はそれが過剰に反応している状態です。
- ■「かゆみ」の感覚異常が掻破の原因
- 健康な肌は、かゆい場所を掻くと、それが痛みに変わることでかゆみが消えるのですが、アトピーの場合は掻けば掻くほどかゆくなるのはなぜでしょうか?
実は、アトピー肌は健康肌とは反対に、痛みの刺激がかゆみに変わってしまうのです。このことから、アトピー肌は刺激が伝わる仕組みに異常があることがわかってきました。
じんましんなどのかゆみは、抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めによって止まりますが、アトピーの場合には、抗ヒスタミン剤でもかゆみが止まらないことがあります。これは、アトピー肌のかゆみにはかゆみを起こす物質であるヒスタミン以外の物質が関係しているためであることもわかってきています。
このように、アトピーの方々を悩ませてきた、かゆみに関する研究はどんどん進んでいます。