私の考えるアトピーの治し方 |
安保徹(あぼ・とおる) 新潟大学大学院医歯学総合研究所教授1947年青森県生まれ。 東北大学医学部卒。米国アラバマ大学留学中の1980年、「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製。その後胸腺外分化T細胞を発見、白血球の自律神経支配のメカニズムを解明。2000年にはこれまで定説だった「胃潰瘍=胃酸説」を覆す顆粒球説を発表し、世界に大きな衝撃を与えた。200を超える英文論文を発表し続ける世界的免疫学者。著書は『免疫革命』(講談社インターナショナル)『未来免疫学』(インターメディカル)など著書多数。 |
- 体を温め、血流をよくして、自律神経のバランスを整えよう
- 免疫と自律神経のメカニズムに関して画期的な発見をされた、新潟大学大学院医歯学総合研究科教授の安保徹先生。
今回はアトピー性皮膚炎の治し方について、お話を伺いました。
- アトピーの急激な増加の要因は、日本人のライフスタイルの変化にある
- ここ十数年、アトピー性皮膚炎 (以下アトピーと略) の患者数は急激に増えています。
一番の要因として考えられることは? -
遺伝的なことも関係していますが、一番の要因は、日本人のライフスタイルが大きく変化したことにあります。戦後の混乱期を経て、日本人の生活は非常に豊かになりました。まだ日本が貧しかった時代、子供は家の仕事を手伝い、外で日が暮れるまで遊んで体をよく動かし、食事は今より粗末なものでした。
しかし現代の子どもたちは、少子化で過保護なほど大事に育てられるようになりました。一年中温度調節された快適な部屋で暮らし、外遊びよりも室内で遊ぶ時間が増えました。食事も栄養価が高くなり満たされていますが、間食が多くなり、栄養の偏りや摂りすぎの傾向があります。今の子どもたちは昔より苦労の少ないリラックスした生活を送っていますが、実はこの生活環境にアレルギーの大きな原因が潜んでいます。
- リラックスした生活が問題なのですか?
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のんびりとリラックスすること自体は、悪いことではありません。しかし人間は、適度な緊張と弛緩のバランスをとりながら生活することで健康を保っています。休んでばかりいると体がなまってしまうように、リラックスしすぎの生活が、心身に偏りを生みます。
偏った生活は、自律神経にも影響します。自律神経は、交感神経と副交感神経のバランスで体をコントロールしていますが、このバランスが崩れると様々な影響が出ます。自律神経がリラックスした状態に偏れば副交感神経が優位になりますが、この状態が過度になるとアレルギー体質につながりやすいのです。
- 生活環境全体が、過度の副交感神経優位な状態をつくっているのですね。
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炭酸ガスも副交感神経を優位にします。ジュースやビールなど炭酸飲料を飲みたくなるのは、リラックスしたいという体の反応ともいえます。
車の排気ガスからも炭酸ガスが出ているので、まさに現代の生活環境はアレルギー体質に結びつく要因にあふれています。副交感神経優位になりすぎるのは大人も同じことで、運動不足や食べすぎなどの生活習慣も要注意です。