冷えとりで病が治る 第2回 |
監修:川嶋 朗(かわしま あきら) 東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所・自然医療部門准教授/東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長 1957年生まれ。北海道大学医学部卒業。東京女子医科大学大学院修了。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院留学。医学博士。専門は腎臓病、膠原病、高血圧症など。東洋医学、代替医療などにも造詣が深く、統合医療に精通。『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社新書)、『クールな男は長生きできない』(ORANGE PAGE BOOKS)、『すべての病は「気」から!』大和書房など著作多数。 |
- 2008年4月から、メタボリック・シンドロームに重点を置いた中高 年対象の「特定健康診査」が始まっています。国をあげて予防に取り組 む「メタボ」ってなに? 体脂肪と肥満の関係は? 「冷え」というキーワードから、肥満にならない体について考えます。
- 脂肪がたまると体は冷える
- 体脂肪というと、ぜい肉、肥満、そしてメ
タボリック・シンドロームと、どうも悪役のイ
メージばかり。でも体脂肪には、もともと人
間の生存に欠かせない大切な役割がありま
す。生きていくために必要なエネルギーの貯
蔵、体の放熱をコントロールして体温を一定
に保つ調節機能、女性の正常な月経に必要
なエストロゲン(女性ホルモン)の活動維持な
ど、健康維持のためには、適度な体脂肪が
必要です。体脂肪が多すぎるのも少なすぎ
るのも、体によいことではありません。今回
は、体脂肪が多すぎる状態=肥満、メタボ
リック・シンドロームについてお話します。
体脂肪が多すぎる場合の原因として、ま ず考えられるのは食事です。食事の量や内 容、夕食後すぐ寝たりといったタイミングも 関係します。さらに、体の冷えによっても脂 肪は蓄積されやすくなります。何らかの理 由で血流が滞り体温が下がると、体内を機 能的に動かす酵素の働きが阻害され、体内 28に消化・吸収された脂肪分が代謝されにく くなります。代謝力が落ちると、余分な脂 肪分は内臓の周りや血管の内側に付着しま す。脂肪の壁ができることで血の通り道は細 くなり血流が悪化、脂肪によって内臓の機 能も低下し、体温がさらに下がるという悪 循環に陥ります。そして蓄積された体脂肪は、冷えること によって硬くなります。
「夕飯で食べ残した肉料理を次の日冷蔵 庫から取り出してみると、表面に白い脂が 浮いていた…」こんな経験がある人は多いで しょう。冷やすと白く固まり、熱を加える と柔らかくなるのが動物性脂肪の特徴。人 間の脂肪も動物性なので、同じことが言え ます。冷蔵庫で固まるステーキのラードのよ うに、人間の脂肪も体が冷えることによって 固まります。
冷えて脂肪が固まるのは、脂肪に血管が ほとんどないため。血流が多ければ熱は伝 わりやすく、外の気温にすばやく反応でき ますが、脂肪が厚いと気温の影響を受けに くくなります。そのため、体が冷えた状態 が続けば脂肪はどんどん硬くなり、その部 分の体温は下がる一方。冷えによって脂肪が たまり、たまった脂肪で体がさらに冷える。 食事の量を減らしてもやせることができな いという人は、このような冷えと肥満の悪循 環に陥っているのかもしれません。
- 様々な病気の引き金となる肥満
- 肥満とは、体脂肪が過度に蓄積された状
態を言います。これは、単に体重が多く太っ
ているというだけではなく、れっきとした生
活習慣病。肥満は、動脈硬化の危険因子と
なり、高血圧症、脂質異常症、糖尿病など
を併発するリスクも伴います。さらに、睡眠
時に断続的に無呼吸になる睡眠時無呼吸症
候群、腰痛、関節痛なども発症しやすくな
ります。
肥満には、皮下脂肪型と内臓脂肪型があ ります。皮下脂肪型は女性に多く、下腹部 から腰、太ももにかけて皮下に脂肪がついた 洋ナシのような体型です。内臓脂肪型は男 性に多く、内臓の周囲に脂肪がついて腹がポ コッと出たりんごのような体型です。皮下脂 肪型肥満が女性に多いのは、女性ホルモンが 内臓脂肪よりも皮下脂肪を蓄える傾向が あるから。逆に男性ホルモンは内臓脂肪を 蓄積させやすいので、男性に内臓脂肪型肥 満が多いというわけです。
- やせていてもメタボの可能性あり
-
内臓脂肪型肥満は皮下脂肪型よりも病
気にかかるリスクが高くなり、動脈硬化を
急速に進行させたり、脳卒中や心臓病など
の危険因子となります。「私はやせているか
ら大丈夫」という人も、隠れ肥満の可能性
があります。隠れ肥満とは、外見上はスマ
ートでBMI(肥満指数)も正常なのに、実は
内臓脂肪型肥満だったというケース。これは
内臓脂肪の検査をしないとわかりませんか
ら、体が冷えやすかったり、食習慣で心当た
りのある人は、ぜひ受けてみてください。
内臓脂肪型肥満に加えて、脂質異常、高 血圧、高血糖のうち2つ以上を併せ持ってい る場合は、メタボリック・シンドロームと診断 されます。
メタボリック・シンドロームになる背景には、冷え・血流の滞り・代謝力の低下など、先述 した冷えと肥満の悪循環があります。血管 はぼろぼろ、血液はドロドロとなり、内臓脂 肪から産生される悪玉ホルモンなどの影響 で、動脈硬化や糖尿病、心臓病になるリス クが非常に高くなります。
このように内臓脂肪は怖い性質を持ってい ますが、一つだけよい点があります。それは、 内臓脂肪はたまりやすいが溶けやすくもあ るということ。蓄積された皮下脂肪を落と すのはなかなか難しいですが、内臓脂肪は早 めの対処で落とすことができます。そして内 臓脂肪を落とすために有効な方法は、とに かく温めること。冷えを解消することです。