アトピーを改善する育菌のススメ |
青木 皐先生(あおき・のぼる) 医学博士(バイオメ
ディカル・サイエン
ス)。生物医学研究
所所長。 1943年生まれ。1975年より生物制御企 業にて、環境品質マネジメントとして の応用昆虫学・微生物制御の研究に従 事。1993年東京大学医学部(解剖学・ 養老孟司教室)研究生。1996年東京大 学総合博物館(医学部門)客員研究員。 著書に『ここがおかしい菌の常識』(集 英社文庫)、『人体常在菌のはなし』(集 英社新書)、『菌子ちゃんの美人法』 (WAVE出版)などがある。 |
- 自分の体に住む「菌」について考えたことがありますか? 美肌と健康の秘訣は、なんと体の「菌」を育てることにあったのです。 知れば知るほど役に立つ、人体常在菌の世界をのぞいてみよう!
- しっとり肌にも「菌」が関係していた!
- パン、納豆、ヨーグルト、醤油、ビール…。これらの食品の共通点は? そう、すべて発酵食品です。発酵食品とは、食品に付着した菌などの微生物の代謝活動(発酵) によって、もとの食材とは違った栄養や美味しさが加わった食品のこと。ヨーグルトの乳酸菌やパンのイースト菌などはおなじみです。人間の食文化をみると、昔から菌とうまく付き合い、利用してきたことがわかります。
菌は食物の中だけでなく、土壌、空気、地球上のありとあらゆるところに存在します。無菌状態の場所を探せば、地中で煮えたぎるマグマの中か、人工的に作られた無菌室くらい。私たちは気づかないうちに、食物、水、空気などから菌を取り込み、体内や皮膚で育て、食べかすと一緒に排泄しています。菌は見えないだけで、非常に身近な存在です。
もちろん人体にも、菌はごまんといます。善玉菌、悪玉菌という言葉があるように、人間によい影響を与える菌もいれば、O157(腸管出血性大腸菌)やボツリヌス菌などの怖い菌もいます。これらの菌を実際に見ることはできませんが、その数の多さには驚かされます。腸内だけで100兆個、皮膚には1兆個の常在菌がいるといわれています。目に見えないからいいものの、もしこれだけの数を目の当たりにしたら、普通の人は卒倒してしまいそうですね。
例えば肌について、菌的に考えてみましょう。しっとりと健康な肌の皮脂膜は、pH4・5?6・5の弱酸性。肌の表面が弱酸性だと、細菌の繁殖を防ぎ、外部の刺激から肌が保護されます。繁殖を防ぐべき細菌は、体に悪影響を与える菌のことで、具体的には、肌をアルカリ性に傾け、かゆみの原因となる黄色ブドウ球菌などを指します。では、肌が弱酸性に保たれるのはなぜでしょう? 実はこれにも菌が関わっています。詳細は後ほどお話しますが、表皮ブドウ球菌という皮膚常在菌のおかげで、皮膚は弱酸性に保たれています。悪玉菌から皮膚を守ってくれるのは、同じ菌の仲間というわけです。
私たちの身の回りは、実は菌だらけ。「菌と仲良くして健康になろう!」が今回のテーマ、ページをめくって、菌のワンダーランドに足を踏み入れてみませんか?