冷えとりで病が治る 第3回 |
監修:川嶋 朗(かわしま あきら) 東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所・自然医療部門准教授/東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長 1957年生まれ。北海道大学医学部卒業。東京女子医科大学大学院修了。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院留学。医学博士。専門は腎臓病、膠原病、高血圧症など。東洋医学、代替医療などにも造詣が深く、統合医療に精通。『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社新書)、『クールな男は長生きできない』(ORANGE PAGE BOOKS)、『すべての病は「気」から!』大和書房など著作多数。 |
- 気づかないうちに進行し、いつの間にか怖い合併症を引き起こす糖尿病。 厚生労働省の「2007年国民健康・栄養調査」では、糖尿病が疑われる 人は2210万人と推定されています。若年層にも広がりつつある糖尿病 予防について考えます。
- インスリンの欠乏・作用不足が糖尿病を招く
- 糖尿病とは、膵臓で作られるインスリンと
いうホルモンが不足したりうまく作用しな
いために、血液中の血糖値(ブドウ糖の濃度)
が基準より高い状態が続く病気。糖尿病の
診断基準は次のとおりです。
人間の体内に取り込まれた炭水化物(糖 質)は、消化管でブドウ糖に分解・吸収され ます。ブドウ糖は、肝臓、心臓に運ばれ血流 とともに全身に供給され、インスリンの力を 借りることでエネルギーとして利用されま す。余ったブドウ糖は肝臓にグリコーゲンと して貯蔵され必要に応じて使われますが、 この貯蔵を促すのもインスリンの働きによる ものです。
インスリンは血糖を下げる働きのある唯 一のホルモンで、血糖値をコントロールするカ ギを握っています。
- 症状を自覚しにくい厄介な病気
- 血液中のブドウ糖は、細胞内に入ること
によってエネルギーとして利用されます。イ
ンスリンがうまく働かないと、ブドウ糖は細
胞内に入れずに血液中に残ってしまいます。
残ったブドウ糖が血液中にあふれた状態が、
いわゆる「高血糖」。高血糖状態が続くと、
細胞はエネルギー不足となり、口の渇き、疲
労感、手足のしびれ感といった症状が出てき
ます。さらに糖尿病の厄介なところは、最初は
症状をなかなか自覚しにくく、そのまま放
置しておくと様々な合併症を起こしやすい
ことです。
糖尿病特有の合併症としては、糖尿病神 経障害(末梢神経や自律神経の障害で、手 足がしびれたり、胃腸障害、立ちくらみ、発 汗異常などが起こる)、糖尿病網膜症(眼の 底にある網膜の障害で視力が低下、白内障 も多い)、糖尿病腎症(腎臓機能の低下)の3 つがあります。その他、動脈硬化症、脳卒 中、心臓病、皮膚病などがあり、感染症に もかかりやすくなります。腎臓病や動脈硬 化などに症状が進む前に改善しておかない と、命にかかわる怖い病気になります。
- 日本人に多いのは生活習慣型の糖尿病
-
一口に糖尿病といっても様々なタイプがあ
り、大別すると下記の3つに分けられます。
日本人の糖尿病患者の9割以上は2型
糖尿病。2型糖尿病は遺伝的体質に加え、
肥満や運動不足などの生活習慣が大きく
影響しています。一方1型糖尿病は生活習
慣病ではなく、遺伝、自己抗体、ウイルスな
どの要因が絡み合って発病するといわれて
います。
大多数の糖尿病患者が2型糖尿病である ことから、ここでは2型糖尿病を想定して話 を進めます。