冷えとりで病が治る 第4回 |
監修:川嶋 朗(かわしま あきら) 東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所・自然医療部門准教授/東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長 1957年生まれ。北海道大学医学部卒業。東京女子医科大学大学院修了。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院留学。医学博士。専門は腎臓病、膠原病、高血圧症など。東洋医学、代替医療などにも造詣が深く、統合医療に精通。『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社新書)、『クールな男は長生きできない』(ORANGE PAGE BOOKS)、『すべての病は「気」から!』大和書房など著作多数。 |
- 乳房や女性性器に関する病気は、女性特有のもの。 多くの女性がかかりやすい子宮筋腫と子宮内膜症を中心に 女性特有の病気と冷えとの関係にせまります。
- 乳房のしこりをチェックする習慣をつけよう
- 女性特有の病気は、乳がん、乳腺線維腺腫(にゅうせんせんいせんしゅ)
、乳腺症といった乳房の病気と、子宮がん、卵巣がん、月経前症候群(PMS)、月経困難症、
子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫(のうしゅ)といった女性性器の病気に大別できます。様々な病
気がありますが、今回は、より多くの女性が悩んでいる子宮筋腫と子宮内膜症を中心
にお話します。
乳がんや子宮がんなどの「がん」については、本シリーズ第1回「がんにならない体を つくる」を参照してください。ただ乳がんについては一言あります。乳がんは、がんの中でも早期 発見・早期治療で完治する確率が高い病気。ときどき自分で乳房にしこりがない かチェックする習慣をつけましょう。そして、異変があった場合はすぐに診察を受けることです。
- 子宮筋腫は加齢に関係する?
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子宮筋腫は35〜50歳くらいの女性に多い病気で、成人女性の5人に一人は子宮に筋
腫を持っているといわれています。子宮筋腫は子宮の平滑筋の中にできる良性の腫瘍。
悪性腫瘍ではないので他の組織へ転移することはなく、命に関わることはない病気です。
貧血が強く起こるとか、大きくなりすぎて圧迫症状が起きるといった症状が出ない限
り、また出産時に筋腫があることが障害にならなければ、筋腫があるだけならば問題
はありません。
子宮筋腫ができる原因は、まだはっきりしていません。私の経験からは、男性の前立腺 肥大症のように、ある程度加齢に伴って出てくる気がします。前立腺肥大症は、加齢と ともに生殖能力が必要とされなくなることから起こりますが、それと同じ理屈で、加齢 とともに子宮があまり使われなくなった分、エストロゲン(卵胞ホルモン)の影響などで、 筋腫ができてしまうのではないでしょうか。
ちなみに、子宮筋腫にこのエストロゲンが関与しているのは間違いありません。閉経後 にはエストロゲンは出なくなりますが、その後筋腫は小さくなる傾向があるからです。
- 子宮内膜症は生理痛と不妊にも関係する
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子宮内膜症も原因がはっきりしていない病気ですが、生理(月経)のある女性の約1割
が子宮内膜症を持つと推定されています。子宮内膜症は、子宮内膜と呼ばれる子宮
の内側をおおっている組織が、子宮の内腔以外の場所(卵巣、腹膜、子宮の筋肉層、直腸
と子宮の間にあるダグラス窩かなど)にできてしまう病気。その症状については、子宮内膜
と生理の関係を知っておくとわかりやすいでしょう。
子宮内膜は「受精卵のふかふかベッド」とよく表現されます。これは子宮内膜が、月 経周期にあわせて女性ホルモンの作用で増殖して厚みを増し、受精卵が着床するため のベッドのような役割をするためです。排卵から約2週間たって受精卵が子宮内膜に来 なければ妊娠は不成立で、子宮内膜ははがれ落ちて排出されます。これがいわゆる生 理です。
その子宮内膜が、他の場所にできるとどうなるでしょう? 通常の生理では、はがれ 落ちた子宮内膜は出血として体外に排出されますが、子宮内膜症で他の場所にできた 子宮内膜は、はがれ落ちても出口がありません。そのため、血液が体内にたまって血腫 や癒着が起こりやすくなります。その代表が卵巣チョコレート嚢腫で、卵巣に飛び火し た内膜が、毎月の月経期に剥離・出血を繰り返すという症状です。出血しても出口が ないから、内出血を起こし、それが月経痛などの痛みなどにつながります。
さらに子宮内膜症が引き起こす症状は、不正出血や痛みだけではありません。 不妊治療を受ける女性の約半数が子宮内膜症であることから、不妊にも関係していると考えられています。