知っていますかアトピーとステロイドのこんな関係 |
監修:三好基晴(みよしもとはる) 1953年福井県鯖江市生まれ 医学博士 臨床環境医 ホスメッククリニック院長 スポーツ選手経験(走り高跳びで2m02cmの記録)をいかし、東海 大学医学部でスポーツ医学、トレーニング方法などを研究していた。 現在、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギー性疾患、 化学物質過敏症、電磁波過敏症、がんや糖尿病などの生活 習慣病などに対して、衣食住の生活環境を改善する診療を している。全国で講演活動や小人数の健康セミナーや料理教室を行っている。 著書は「買ってはいけない」共著(金曜日)「買ってはいけない2」 共著(金曜日)「クラシックダイエット」(オークラ出版)「病気 の迷信」(花書院)「健康のトリック」(花書院)「ウソが9割 健 康TV」(リヨン社)「健康食はウソだらけ」(祥伝社)携帯小説 「ドクターシェフ」http://ncode.syosetu.com/n6757e/などがある。 |
- アレルギーがなくてもアトピーになるの? アトピーになるとか
ゆみ神経が伸びやすいのはなぜ? ストレスでアトピーが悪化し
やすい理由は? これらの質問に答えるためには、共通したある
一つのキーワードが必要になります。それは「ステロイド剤」。
本特集では、アトピーとステロイド剤の関係について、あまり知 られていない部分に光を当てていきます。
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アトピー性皮膚炎はアレルギー 性疾患と言われていますから、す べてアレルギーによって発症して いると考えている人が多いと思い ます。
アトピー性皮膚炎は、原因と言 われる食べ物、ダニ、ハウスダス トなどの環境物質のアレルゲン物質と、白血球の一種である肥満細 胞に付着したアレルギー抗体であ る血清IgEの結合により、肥満細 胞からヒスタミンなどが放出され ることによるアレルギー反応によ って発症すると言われています。 日本皮膚科学会では「アトピー 性皮膚炎治療ガイドライン」の中 で「アトピー性皮膚炎は、増悪・ 寛解を繰返す、掻痒のある湿疹を 主病変とする疾患であり、患者の 多くはアトピー素因を持つ」と定 義しています。しかし、日本皮膚 科学会のアトピー性皮膚炎の診断基準(下段図参照)には、アレ ルギーの指標となる「血清IgE 値の上昇」は入っていません。診断の参考項目に入っているだけで す。この診断基準から、アトピー は必ずしもアレルギーによるもの ではないことが分かります。
実際に、かゆみを伴う皮膚炎の 症状などで初めて病院に行って検 査をして血清IgE値が正常であ っても、臨床症状などでアトピー 性皮膚炎と診断されている人たち は少なくありません。このような 人たちはアレルギーではないアト ピー性皮膚炎なのです。
- 薬剤によってもアレルギーが増悪するケースもある
- ただし、ステロイド剤やタクロ
リムス剤などの薬物を使用したこ
とによって、血清IgE値が高く
なっている人たちがいます。その
後いろんな病院で検査をするたび
に血清IgE値が高くなっている
ので、環境物質(アレルゲンや化
学物質)によるアレルギーが原因
であると思ってしまうのでしょう。
しかし実はステロイドの使用によ って血清IgE値が高くなること がわかっています。つまり、ステ ロイドの継続使用で、アレルギー が増悪することもあるので注意が必要です。
- 食物アレルギー除去食の考え方
- アトピー性皮膚炎は大豆や卵や小麦などの
食べ物が原因で発症することがあると言われ、
そのため血液検査で陽性反応が出た食べ物は
一切とらないように厳しい除去食を指導する
医師は少なくありません。
しかし、厚生労働省が作成した食物アレル ギーの「診療の手引き」によれば、不必要な食事制限はしないことを原則としています。 その根拠として、全卵、卵黄、牛乳、小麦、 大豆の血液検査においてはいずれも約80%の 人が陽性を示しますが、実際にこれらの食べ 物を食べて反応をみる食物負荷試験においての陽性率は全卵で約60%、牛乳で約45%、小 麦で約35%、卵黄で約25%、大豆に至っては 約15%しかありませんでした。
たとえ血液検査で陽性反応が出た食べ物で も、最初は少しだけ食べて反応がでなければ 少しずつ増やしていき、普通に食べられれば 食べてもよいのです。また、食べて症状が出 ても軽くて我慢できるようであれば、食べ続 けていると症状が出なくなることもあります。 以前よりは除去食を厳しく指導する医師は 少なくなってきました。しかし、血液検査で 陽性反応が出れば、今は食べられても食べ続 ければ反応が出やすくなる、と医学的には根拠の乏しいことを言って、除去食を厳守する ように指導する医師もいます。
アトピー性皮膚炎で除去食による厳しい食 事制限をすることで、家庭不和になってしま った10歳の男子の症例があります。 薬物療法の効果が少なく、米、卵、牛乳、 小麦などがまったく食べられず、これらを除去して、粟、ひえ等を中心にした食事療法を始めました。多少、病状は軽減しましたが、1 カ月後、再び増悪しました。
この家庭は夫婦共働きで子供は3人。母親は、 アトピー性皮膚炎のお子さんと、他の家族と で全く別々の食事を作っていました。しかしそのうち、母親に時間的余裕が無くなり、粟やひえ等を使った食事を、他の家族も食べる ことになりました。
夫や兄弟たちは不満を持ち、夫婦喧嘩が多 くなり、家族の雰囲気が暗くなってきました。 このような状態が患者さんの精神的ストレス になり、病状が悪化してきました。 このままでは、家庭崩壊につながりかねな いと、食事制限を緩めたところ、最初は軽い 症状が出ていたものの短時間で症状は治まり、 我慢できる状況になり、継続していくうちに症状は出なくなりました。家族みんながほとんど同じものを食べられるようになったため、 家庭内も明るくなり、患者さんの精神的ストレスも軽減しました。