冷えとりで病が治る 第8回 |
監修:川嶋 朗(かわしま あきら) 東京女子医科大学附属青山女性・自然医療研究所・自然医療部門准教授/東京女子医科大学附属青山自然医療研究所クリニック所長 1957年生まれ。北海道大学医学部卒業。東京女子医科大学大学院修了。ハーバード大学医学部マサチューセッツ総合病院留学。医学博士。専門は腎臓病、膠原病、高血圧症など。東洋医学、代替医療などにも造詣が深く、統合医療に精通。『心もからだも「冷え」が万病のもと』(集英社新書)、『クールな男は長生きできない』(ORANGE PAGE BOOKS)、『すべての病は「気」から!』大和書房など著作多数。 |
- 風邪は誰もがかかる身近な病気。 感染しやすく、こじらせると怖い病気でもあります。 でも、冷えを取り除いて免疫力を高めれば、予防することも可能です。 風邪について理解して、 風邪をひきにくい体になる生活習慣を身につけましょう。
- 風邪を治しますか?症状を緩和しますか?
- 風邪の患者さんを診る場合、私のクリニッ
クでは最初に確認することがあります。
「2、
3日ゆっくり休んで早めに風邪を治します
か? それとも、すぐに症状を緩和させて
とりあえず体を楽にしたいですか?」と訪
ねて治療方針を決めるのです。
早めに風邪を治すためには、咳や鼻水、 熱といった症状を少し強めるような治療を します。風邪の諸症状はウイルスを外に出 すための反応だから、この反応を強めること によってより早くウイルスを追い出し、風邪 を根治させることができます。具体的には、 ゆっくり休息をとりながら、漢方薬などで 体温を上げてウイルスを追い出しやすい状態 にして治します。
一方、仕事などの都合で休みがとれず、す ぐに症状を緩和させたい場合は、とりあえ ず咳止めや解熱剤を使います。もちろん、こ の場合は風邪が長引きやすくなるのでその 旨も伝えます。咳止めや解熱剤などの対症 療法的な西洋薬は、症状を緩和して体を楽 にします。しかし、ウイルスを追い出そうと する症状を抑えてしまえば、体内はウイル スにとって住み心地のよい場所となり、薬が 切れれば症状はもとに戻ってしまいます。だ から結局は風邪が長引くのです。
- 「治す」と「緩和する」は正反対の治療
-
これら2つの治療方針は、そもそもの目
的が違います。風邪を早く治すための治療
は、症状を出し切ってウイルスを追い出しま
す。一方、症状を緩和させるための治療は、
症状を出さないように働きかけ、その結果
ウイルスは温存されます。全く正反対の治
療をしているといってよいでしょう。
「風邪を治すこと」と「風邪の症状を緩和 すること」が正反対の治療であるならば、あ なたはどちらを選ぶでしょうか? もちろ ん人それぞれの事情があるので、どちらがよ いかはケースバイケースです。しかし、咳止め や解熱剤といった対症療法のための薬を使 う場合は、症状がつらいから一時的に抑えて いるに過ぎないということを理解しておいて ください。
- 風邪を「ふうじゃ」と呼ぶ中国医学
-
西洋医学では、風邪は、ウイルスによって
上気道(咽頭から扁桃、喉頭、気管支など、
呼吸時に空気が通る道)に炎症が起こってい
る状態と捉えられています。ウイルスによっ
て炎症が起こるのだから、風邪のウイルス自
体をやっつければいいのですが、現状はそのよ
うな薬はありません(風邪のウイルスに抗生
物質は効きません)。対症療法として、咳や
熱の症状を抑える薬で治療します。
一方中国医学では「風邪」を「ふうじゃ」と
いい、人間の体内に外から邪気が入ってきて、
それで病気になると考えられています。外からの邪気は、首スジにあるツボ( 風府ふうふ・風地ふうち・風門ふうもん)から入り込んでくるといわれています。
「風邪の原因はウイルス」という常識を持って いる我々にとって、中国医学の「風 ふ う 邪じ ゃ 」という 考え方は、少し奇妙なものに思えます。で は、その治療方法はどうなのでしょう?