アトピーを長引かせないために、知っておきたい感染症の基礎知識 |
監修:木俣 肇先生(きまたはじめ) 木俣肇クリニック院長・医学博士 1953年生まれ。77年京都大学医学部卒 業。85年からUCLAに留学し、アレルギ ーの研究に従事。アトピー性皮膚炎に関 する研究を海外の雑誌に多数発表。アト ピー性皮膚炎患者の毛髪分析にて、ミネ ラル異常を世界で初めて報告。アトピー 性皮膚炎は適切な治療と、規則正しい生 活、感情の豊かさ(愛情と笑い)によるス トレス発散によって治療しうるとして、講 演活動も積極的に行っている。 |
- アトピー性皮膚炎(以下、アトピーと略します) を発症している皮膚は、表面のバリアが壊れて いる(防御機能が低下している)ことが多く、外 部から細菌やウイルスを侵入させやすい状態に あります。そのため「感染症」にかかりやすく、 この感染症が、アトピー治癒を遅らせてしまう原 因の一つにもなっています。みなさんの中にも、 ヘルペスや黄色ブドウ球菌による感染症を繰り 返し発症している方もいらっしゃることでしょう。 今回の特集では、感染症のなかでも最近急増 している「ヘルペス」「カポジ水痘様発疹症」 (ヘルペスの重症型・全身型)を取り上げます。 ヘルペスってどういうもの? 予防法は? かかっ てしまったらどうすればいい?など、知っておき たい基礎知識をご紹介しましょう。
- ヘルペスには2種類ある
-
「ヘルペス」には「単純ヘルペス」
と「帯状疱疹」の2種類がありま
す。同じヘルペスとはいえ、この
2つは違うものです。
単純ヘルペスの中でもよく知ら れているものに「口唇ヘルペス」 があり、これは、アトピーでなく ても、疲れやストレスから、また は風邪で発熱したときなどにもで きやすい、唇付近の水ぶくれです。 「単純ヘルペスウイルス」との接触 により発病します。
「帯状疱疹」は、水痘(一般的な名 称は「水ぼうそう」)にかかったこ とのある人にしか発症しないもの で、かつて水痘になったときのウ イルス(水痘・帯状疱疹ウイルス) が神経に残り、それが体調悪化な どの免疫力低下時に活性化して発 病するものです。
口唇ヘルペスや帯状疱疹は、ア トピーの方に限らず、誰にでも同 じリスクでかかるものです。
そして、アトピーの方に起こり やすい「ヘルペス」は、前者の「単 純ヘルペス」なのですが、「口唇 ヘルペス」とはまた違い、顔、手、 足、背中などのあらゆる部位に見 られるものです。
- カポジは、単純ヘルペスが悪化したもの
-
単純ヘルペスウイルスは、どこ
にでもあるウイルスで、傷や火傷
といった皮膚の異常があるところ
に付着しやすい性質を持ちます。
アトピーで皮膚のバリアが壊れて
いると単純ヘルペスウイルスを侵
入させやすく、それにより単純ヘ
ルペス(以下、ヘルペスと略しま
す)が発症します。
ヘルペス感染症が広範囲に及ん だり、局所的であっても重症化し た症状は「カポジ水痘様発疹症」 (以下、カポジと略します)との病 名になります。つまり、ヘルペス の重いものがカポジなのです。
ヘルペスにかかると"痛がゆ い"症状に襲われますが、アトピー の症状がある人にとっては、アト ピーによる痛がゆさと区別がつけ にくいものなので、感染してもす ぐに気づきにくい場合もあるで しょう。