アトピーを改善する食生活の基本 |
監修:角田和彦(かくた かずひこ) かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長 1953年生まれ。1979年、東北大学医学部卒業。専門は小児循環器・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイス ときめ細かい診療を続けている。著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)、『アレルギーと食・環境』(食べもの通信社)などがある。 |
- アトピーを改善する食べ方のキホン
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人間に適した食物は、哺乳動物と
しての生物的な消化能力によって
決まります。この消化能力からあ
まりにはずれた食べ方をすると、
食物を消化・処理するために大き
なエネルギーを使い、体は疲労し
てしまいます。
古来より人間は、穀物や木の実か らエネルギーを得て生存・発展し てきました。歯の構造をみると、 臼歯と呼ばれる平らな歯が大半を 占め、穀物やイモ類、野菜などの 食物を食べるように進化していま す。消化能力も、穀物やイモに含 まれるでんぷんを処理する能力が 高く、これらの食物を中心に摂る ことが、人間の体に合った食べ方 と言えるでしょう。
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現代では、科学の力でどんな地
域でも様々な作物が栽培される
ようになり、離れた土地で生産・
加工された食品を簡単に入手で
きるようになりました。しかし
人類の歴史を振り返ると、私た
ちの祖先は非常に長い間自分た
ちが住む土地でとれた食物を食
べ続けてきました。
例えば日本では、お米などの穀 類、野菜や豆、海草や魚介類な どの和食が中心。日本人にとっ て和食は、日本人の消化能力に 合った体にあまり負担をかけない食物なのです。 日本人の消化能力や腸の長さは、長い歴史の積 み重ねで定着したものだから、他の土地・他の 自然環境から持ってきた食物は体の負担となり やすく、注意が必要です。例えば、パン食や乳 製品、卵や肉類などは、もともと日本人が食べ て来なかった食物。一般的な日本人の体質には 合いにくい食物なのです。
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戦後に日本の食習慣がどんどん欧米化して
いったのは、先進的な欧米文化への憧れや
経済的な競争、戦後の食糧難で持ち込ま
れたパン食や脱脂粉乳、肉食の奨励など、
様々な要因によるものです。
人類史から見れば、この変化は非常に短期 間に起こったものに過ぎません。これまで の日本人の食習慣を無視して、単に「栄養 がある」「健康にいい」という情報や知識 だけで自分の体に合わない食生活に変えて しまえば、体への負担も大きいでしょう。 さらに現代の子どもたちは、加工食品の強 い味付けで味覚が麻痺し、ほんとうに美味 しいものを見分ける力を失いつつあります。 極端に甘いもの、しょっぱいもの、油脂の 多い食品を好み、化学調味料が入っていな い味つけに物足りなさを感じるようになっています。じっ くりと煮込んだ大根や新鮮な野菜のほのかな甘 さがわかる、するどい味覚や嗅覚を取り 戻せるような食習慣に変える必要があるでしょう。