アレルギーを起こさない授乳・離乳食 |
監修:角田和彦(かくた かずひこ) かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長 1953年生まれ。1979年、東北大学医学部卒業。専門は小児循環器・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイス ときめ細かい診療を続けている。著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)、『アレルギーと食・環境』(食べもの通信社)などがある。 |
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第6回「アトピーを改善する食生
活の基本」(あとぴナビ2010 年10
月号)では、毎日の食事がアトピー性
皮膚炎に大きな影響を与えているとい
う話をしました。古来からの日本人の
食習慣を知り、その食習慣によって培
われた消化能力・体質に合った食事を
することが、アトピーを改善する食生
活のポイントでした。
ヒトの体質を形成する食習慣は、生 まれて間もない授乳期、さらに胎盤を 通して母体から栄養を吸収する胎児 期から始まっています。この時期の栄 養は母体を通したものなので、母親自 身の食事、母親のこれまでの食習慣が 関係してきます。まず母乳について考 えてみましょう。
- 母乳は赤ちゃんの完全栄養食品
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哺乳類は、まず母親の胎内で子どもを育て、
出産後は自力で食事ができるまでの間に母乳を
与えます。母乳は、母親が摂った栄養
を子どもが摂取しやすいように母体
内でつくられた食品と言えます。母乳
中には、乳糖・ビタミン・ミネラル・
たんぱく質・脂質などの栄養素が、乳
児にとって必要・最適な状態で含まれ
ています。
アレルギーの視点から母乳をみる と、次のような特徴があります。
❶外部からの病原体に対する抵抗力は、胎盤と母乳を通して母親から赤ちゃんに移行する。
胎児の頃は胎盤を通して、生まれて からは母乳を通して、赤ちゃんは外部 の病原体やウイルスに対する抵抗力を 持ちます。赤ちゃんは、過剰なアレル ギー反応を抑制する大切な働きを、母 親から受け継いでいるわけです。
❷母乳中には、乳児の成長に必要な乳糖が多く含まれている。
ヒトの母乳中には、ほかの動物に比 べて多くの乳糖が含まれ、乳児の成長 に必要なエネルギー源は、主に乳糖か ら得られます。
乳糖は、乳糖を分解できる消化酵素 を持った乳児期にしか利用できません。 成長に伴って乳糖を分解する力は落ち てくるので、赤ちゃんはいつまでも母 乳からエネルギーを摂ることができま せん。エネルギー源を、母乳中の乳糖 から穀物やイモ類に含まれるでんぷん に変えていくことが離乳食の大きな目 的です。
❸母乳中には、母親が体に蓄えてきた脂肪分が多く含まれている。
母乳には、母親の体に蓄積された脂 肪分も多く含まれます。そのため、母 親の脂肪に汚染食品や化学物質が多く 含まれていれば、多量の汚染物質が母 乳中に含まれることになりアレルギー の悪化原因となります。出産の何年も 前から(子どもの頃から)、汚染食品や 化学物質を避けた食習慣を持つことが 理想的です。母乳中にはお母さんが現 在食べている食材の栄養が優先的に移 行するので、母親がきちんとした食事 をして授乳することが大切です。
❹授乳中は赤ちゃんの防衛機構 が未熟。
乳児期には赤ちゃんの消化機能は未 発達です。母乳中に含まれる免疫グロ ブリン(Ig Aなど)は赤ちゃんの未熟 な免疫を補ってくれます。しかし、消 化機能は未熟で、母乳以外のアレルギー を起こしやすい食品を食べさせるとア レルギーを起こしてしまいます。アレ ルギーを起こしやすい食品については、 次に紹介します。
授乳期は、母親が米と野菜を十分 に摂って、汚染された油脂(牛乳・卵・ 獣肉)・トランス脂肪酸や汚染された 魚介類を避けた食事が基本。人工ミ ルクを与える場合は、牛乳中の油脂を 取り除きトランス脂肪酸が少なく、牛 乳たんぱくを取り除いたアレルギー用 ミルクが望ましいでしょう。
- 離乳食でアレルギーを起こさない体作り
- 赤ちゃんは、成長していく過程で体
に合った食物を摂取できるように親か
ら教えられていきます。同時に消化機
能も、母乳中の乳糖を分解する消化
酵素中心の消化機能から、様々な食
物を消化できる消化機能へと発達して
いきます。
離乳とは、母乳(あるいはその代用 品の人工ミルク)から与えられていた 栄養を、体に合った食物から自分で摂取できるようになること。だから離乳 食は、これから成長する体と心を作る 食習慣の大切な土台となります。 免疫・内分泌・神経系が正常に発 達し、過剰なアレルギーを起こさない 体と心を作り上げることを目標に、将 来子どもたちにどのような食生活をし てほしいかを考えながら離乳食を進め ることが大切です。
日本に住む私たちにとっての理想的 な食生活は、日本で古来より食べられ てきた日本人の遺伝子に合った食品を 摂ること。さらに環境汚染化学物質や 農薬・添加物が残留した食品を多食し ないことです。離乳食も同じ考えで進 めていき、子どもたちに食べてほしい 食品を伝えていけば、将来もアレルギー を遠ざけることができるでしょう。