活性酸素を減らしてアトピー改善 |
監修:角田和彦(かくた かずひこ) かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長 1953年生まれ。1979年、東北大学医学部卒業。専門は小児循環器・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイス ときめ細かい診療を続けている。著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)、『アレルギーと食・環境』(食べもの通信社)などがある。 |
- 活性酸素の話の前に、生物の進化
に関するちょっとスケールの大きな
話からはじめましょう。まだ人間は
おろか、生物がほとんど存在しなかっ
た太古の昔、地球上にはほとんど酸
素がない時期がありました。大気は
二酸化炭素であふれており、生物が
住める環境ではありませんでした。
そんな環境に、光合成によって二
酸化炭素と水と太陽光線から酸素
や有機物を作り出す植物が現れまし
た。それから数十億という年月をか
けて、植物の増加とともに大気に酸
素は増えていきました。
酸素はオゾン層を形成して地上を 太陽の紫外線から守り、生物が生存 できる環境を作り出しました。以来、 地球上に生存するほとんどあらゆる 生物は、大気中の酸素を体内に取り 込むことによって生命を維持してい ます。
- 酸素は体に悪いもの?
-
どんな生物にも必要な酸素です
が、実は酸素は、生物にとって良い
面と悪い面を併せ持っています。良
い面とはもちろん生命を維持する手
助けをすること。ヒトの体に取り込
まれた酸素は、ともに血液中に取り
込まれた栄養素を分解し、エネルギー
を作り出します。
悪い面とは、物質と結びつくこと によって酸化するという毒性も持ち 合わせていることです。たとえば、 リンゴの皮をむいて放置しておけば、 茶色っぽく変色していきます。鉄な ども、しだいに錆びついてきます。 これらはすべて、物と酸素が結びつ いて酸化が進んだ結果です。そして この酸化を引き起こした物質が活性 酸素と呼ばれるものです。
酸素は生命を維持してくれる半 面、生命体を酸化し細胞を傷つけて しまう毒性を持っています。だから、 生物が体内に酸素を取り込んで生き 延びるには、酸化を抑える働きが体 に備わっている必要があります。現 在生存している生物は、すべてこの 仕組みを体内に持っているのです。
- 人体と活性酸素
-
では、人間の場合はどのような仕
組みがあるのでしょう? 体に悪いこ
とをするだけのように見える活性酸
素ですが、人間の体にとって大切な役
割も持っています。活性酸素には、外
から侵入してくるウイルスや細菌から
人体を守る働きがあるのです。
活性酸素は、まず体の防御のため
に利用されます。そして余ったもの
は、抗酸化酵素によって処理されま
す。この処理がうまくいけば、過剰
な活性酸素によって細胞が傷つけら
れることはありません。
活性酸素を処理する抗酸化酵素と は、SOD(活性酸素還元酵素)・ベ ルオキシダーゼ・カタラーゼなどの 酵素の総称で、もともと人間の体に 備わったもの。抗酸化酵素が活性酸 素を処理する能力には個人差があり ますが、野菜や果物などに含まれる ビタミンC、βカロチン、カテキン、 フラボノイドなどを摂取することに よって補充することができます。
- 活性酸素はアトピーの悪化原因の一つ
-
体内の抗酸化酵素が十分に働いて
いれば、細胞は活性酸素に傷つけら
れることなく、健康な状態を維持で
きます。しかし問題なのは、活性酸
素が多すぎて体で処理しきれない場
合。体の処理能力を超えるほど活性
酸素が増えると、細胞は傷つけられ
て正常に働かなくなります。さらに活性酸素がリノール酸などの不飽和
脂肪酸と反応すると過酸化脂質を作
り出します。過酸化脂質も細胞を傷
つけ、肌の保湿機能まで奪います。
過剰な活性酸素や過酸化脂質は、 アトピー性皮膚炎などのアレルギー 疾患をはじめ、最悪の場合はがんな どの様々な成人病(生活習慣病)の 原因の一つとされています。