アレルギー症状が出ない生活術 |
監修:角田和彦(かくた かずひこ) かくたこども&アレルギークリニック 小児科・アレルギー科 院長 1953年生まれ。1979年、東北大学医学部卒業。専門は小児循環器・アレルギー疾患。自分自身を含め、 5人の子供と妻にアレルギー体質があることから、常に患者の視点ももちながら、具体的なアドバイス ときめ細かい診療を続けている。著書に『アレルギーっ子の生活百科』(近代出版)、『食物アレルギー とアナフィラキシー』(芽ばえ社)、『アレルギーと食・環境』(食べもの通信社)などがある。 |
- アレルギーを予防・改善するため、 衣食住においてどんなことに気をつ ければよいか? これまでの1年間、 様々な観点から考えてきました。今 回は最後の締めくくりとして、アレ ルギー治療の基本的な考え方から振 り返り、アレルギー対策に最低限必 要な心構えをお伝えして、皆さんの これからの生活に役立ててもらえれ ばと思います。
- アレルギーは体を守る防衛反応
-
アレルギーは、まず体を守るため
の生体防衛反応と考えられます。例
えば、卵アレルギーがある人の体は、
体外へ卵を追い出そうとして、嘔吐
したり湿疹を出したりします。これ
は「卵は自分の体に適した食品では
ない」と判断し避けようとするため
です。
なぜそのようなアレルギー反応を 起こすのか原因を調べてみると、様々 なことがわかります。アレルギーを 起こす食品は、「日本人の体質に合わ ない(日本人の腸の消化能力では処 理が難しい)」食品であったり、「免疫・ 神経・内分泌の働きを阻害する有害 化学物質に汚染されている」食品で あったりと、何らかの有害性を持っ ています。
だからアレルギー体質の人は、日 本人の体に負担のかかりやすい食品 や、体に有害な物質を敏感に見わけ て体に取り入れないようにしている と考えることもできます。アレルギー 症状が人間の間違ったライフスタイ ルに警告を発しているとしたら、ア トピーなどアレルギー疾患の患者さ んは、そのことを教えてくれている のです。
- 過剰なアレルギー反応でアレルギー疾患に
-
アレルギーが正常に生体防衛反応
として働いてくれるなら、その反応に
従った対処や治療でなんとかなりそう
です。しかし、体はしばしば過剰に反
応しすぎて激しいアレルギー症状を起
こします。有害化学物質などが免疫
機能に影響し、正常なアレルギー反応
を混乱させるからです。
このような過剰なアレルギー反応
は、自力で調整することができずにア
レルギー疾患に発展してしまいます。
アレルギー疾患の治療では、次の3つを把握することが大切です。
❶ アレルギーの原因
❷ アレルギーを起こしやすくしている誘因
・腸内の状態・環境中のアレルゲン・他のアレルギー症状など
❸ 過剰なアレルギー反応が起こらないための対策
③については本連載で様々な対策を 伝えてきましたが、最低限実行してほ しいことを、最後にまとめておきます(次ページ表A)
- アレルギー体質でも健康に過ごす術を持とう
-
アレルギーには体質的な問題もあ
ります。アレルギー体質の人は、ひ
どいアレルギーを起こさず健康を損
なわずに過ごせるよう日常的に気を
つけなければなりません。
アトピー性皮膚炎でも、疲れがた まったり寝不足が続くと症状が悪化 するでしょう。実際に、症状が悪化 したらしっかり休み、睡眠をしっか りとるようにしている人も多いと思 います。アレルギー体質があると、 自分の症状から健康状態を把握しや すいので、他の病気にも常に気をつ ける傾向があるようです。
またアレルギー体質の人は、環境 の急激な変化などに弱いところがあります。季節の急激な変化、寒い場 所から暑い場所へ急に移動、急に運 動したときなど、環境の変化につい ていけず症状悪化につながりやすい 傾向があり、心理的なストレスにも 弱い面があります。
環境や心理面の変化に「弱い」と いうよりも、「非常に敏感」でそのコ ントロールがうまくできないと言った ほうがいいかもしれません。なるべ く自分の苦手な環境変化や傾向を把 握し、そんな場合は無理をせず、生 活環境や食生活の改善で乗り切れる 術を身につけましょう。