福島原発事故はアトピーにどんな影響があるの? |
監修:小出 裕章
京都大学原子炉実験所 助教- 原子力の平和利用を志して勉学に励むが、学ぶにつれその危険性に気づき、放射能汚染の被害者の立場に立った研究
を続ける。専門は放射線計測・原子力安全。
主著に「原発のウソ」扶桑社、「放射能汚染の現実を超えて」河出書房新社などがある。
- 3月11日、東日本大震災に伴い福島第一原発事故が起こりました。
1986年のチェルノブイリ原発事故と同等のレベル7という規模の人類史上まれにみる放射能汚染は、私たちの生活にどんな影響を与えるのでしょう?いまだに事故収束の見通しが立たない混沌とした状況の中、放射線被害を住民側に立って考え続けてきた原子力の専門家・小出裕章先生にお話を聞きました。
- 暫定基準値ってどういうこと?
- 福島の原発事故以降、放射能汚染に関する様々な暫定基準値が定められています。
- 暫定基準値内ならば安全と考えてもよいのですか?
- 基準値以下≠安全
「被曝については、安全という言葉を使ってはいけない」と私は思っています。
被曝による障害は、急性と晩発性(数年~数十年後に障害が現れる)のものに分けられます。急性障害については、閾値(この量以下の被曝なら安全という値)があります。閾値以下の被曝量であれば症状が出ないわけだから、こちらの場合は安全という言葉を使ってもいいかもしれません。
しかし、晩発性の障害には閾値がありません。どんなに微量な被曝でも危険は残っています。危険が残っている限り、「安全」という 言葉を使うのは不適切でしょう。
基準値というのは、社会的な目安となる評価基準にすぎません。基準値以下だから安全ということはありません。まして「暫定」とつくからには緊急の一時的なものです。あいまいな政府の対応状況からみても、信頼に足るものとは言えないでしょう。
1ミリシーベルトまでは我慢!?
日本の法律では、1年間の被曝限度線量は1 ミリシーベルト(m Sv)と定められています。ではそれが安全の基準かといえば、もちろん違います。
「年間被曝量が1ミリシーベルト以下でも危険性がないとは言えない。でも日本で生活する場合、1ミリシーベルトまでは我慢してください」という社会的な規範でしかありません。
年間に1ミリシーベルトという基準で考えると、「ごく平均的な人が1ミリシーベルトの被曝をした場合、1万人に1人ががんで亡くなることになるけど、その程度であれば我慢できるでしょう」というのがこの基準の意味です。子どもの場合は放射線感受性(放射線の影響の受けやすさ)が高いので、1万人に4人ががんで死亡すると計算できます。