アトピーを克服するためのスキンケア基礎知識 &春の紫外線対策 |
監修 市橋正光(いちはし まさみつ) 神戸大学医学部皮膚科名誉教授 神戸医科大学卒業。神戸大学大学院修了。 医学博士。紫外線による皮膚損傷・発がん・光線過敏症・色素異常症などを専門に研究。皮膚に対する太陽紫外線の影響について、セミナーや講演を各地で行うなど広く活躍している。著書に『健康と紫外線のはなし』(DHC)、『紫外線Q&A』(シーエムシー出版)などがある。 |
- 春先はアトピーの症状が悪化しやすい時期。季節の変わり目、激しい気温差、紫外線、花粉、黄砂…。
様々な要因が複雑に絡む季節だからこそ、アトピーケアの基本に立ち返りましょう。
アトピー肌の特徴を知り適切なスキンケアを行うことが、アトピー克服の近道になります。
- ■ アトピー肌は、なぜ乾燥しやすいの?
- 人間の体は、赤ちゃんで体重の約70%、成人で約60%が水分で満たされています。体内の細胞や組織は水分のうるおいの中で活動し、水分が保たれることによって正常に機能しています。日照りが続くと植物はひからびて枯れてしまうように、生命体には適度な水分が必要というわけです。
乾燥した部屋にコップの水を置けば水分は蒸発し、いずれなくなってしまいます。人の体も、乾燥した環境では水分が失われていきます。でもよほど乾燥しない限り、体がひからびてしまうことはありません。皮膚の表面には角質層と呼ばれるバリア膜があって、水分の蒸発を防いでいるからです。
角質層は非常に薄い膜で、厚さは20ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリ)しかありません。それでも健康な角質層は、細菌やウイルスから体を防御し、水のように小さな分子さえなかなか通しません。私たちの体を覆っている皮膚は、外の環境から身を守ってくれる器官です。角質層はその最先端で、皮膚を守るバリアの役割を担っているのです。
アトピー性皮膚炎の皮膚は、このバリア機能が低下していると言われています。バリア機能が低下すれば、外部環境の影響を受けやすくなります。外が乾燥すると体の水分が蒸発しやすく、皮膚も乾燥してきます。外からの刺激にも弱く、ウイルスや細菌などの感染症にかかりやすくなります。
- ■ スキンケアのポイントは、保湿・感染防御・紫外線対策
- このように考えると、皮膚の乾燥によるかゆみや、感染症による悪化を防ぐアトピーケアのポイントは、皮膚のバリア機能を向上させることにあります。バリア機能が高まれば、皮膚の水分は保たれ(保湿)、ウイルスなどの感染から皮膚を守ります(感染防御)。このバリア機能を高めるためには、毎日のスキンケアが有効です。
そしてこれからの季節は、紫外線対策も大切です。皮膚のバリア機能が低下したアトピー肌は紫外線の影響を受けやすいため、UVクリームなどでしっかり保護する必要があります。