あとぴナビ/スペシャルインタビュー |
取材・文/村串沙夜子、撮影/橋詰芳房 |
PROFILE 高橋 和也(たかはし かずや) 1969年生まれ。東京都出身。 1988年、“男闘呼組”のメンバーとし「DAYBREAK」でレコードデビュー。 現在は俳優として、テレビや映画、舞台などで活躍。 代表作品に、映画『ロックよ静かに流れよ』、『ありがとう』、『出口のない海』、などがある。 韓国ドラマ『オールイン』、『美しき日々』などの、イ・ビョンホンの日本語吹き替えを担当。 NHKテレビ大河ドラマ『風林火山』にも出演。現在主役を務める映画『日本の青空』が各地で上映中。 |
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アイドルグループ「男闘呼組」として活躍した後、俳優に転身。
現在は演技派俳優として映画や舞台などで次々新しい役に挑戦している高橋和也さん。家庭では、「6人もいると家の中は大変ですよ!」という、3歳から中学1年生まで6人のお子さんの父親です。
「子どもがたくさん遊べるように」と自然の残る郊外に住み、家族と過ごす時間を大切にしています。
- 俳優:高橋 和也さん
- 画面の中央にいても、脇にいても、「いい仕事をしている役者だな」と思われたい
- ■ テレビに出ることが、子どものころからの夢だった。
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NHK大河ドラマ『風林火山』、映画『出口のない海』、NHK連続テレビ小説『純情きらり』、映画『日本の青空』。
俳優・高橋和也さんが演じるのは、決して派手ではないけれど、実直で深い人間性を持つ役ばかりです。
現在演技派俳優として活躍中の高橋さんは、元アイドルグループ男闘呼組のメンバー。デビューしたのは15歳の時でした。
「歌手に憧れ、自分でオーディションに応募しました。友達と一緒に受け、友達は一次通過したのに、自分は不合格。それでも二次審査に押しかけ、自分も受けさせてくれと直談判して、事務所に入ることになったんです」絶対にあきらめない強い気持ちで勝ち得た芸能界デビュー。
数々のライバルを横目にあっという間にトップアイドルへと駆け上がりました。「ライバルが常にたくさんいて、競争に勝たなければ生き残れない世界。レコーディングや収録などで365日休みなしで、いつも必死でした。でも、当時はそれが辛いとは思わなかったですね。
小さいころからの夢を素直に追い続けられたから、夢をかなえられたのだと思います」夢を夢のままにせず、自分を信じて挑戦し続けてつかんだ成功。15歳といえば、一般的にはまだ自分の進路に悩んでいる年齢です。あのころ頑張ることができたのは家庭の事情によるところが大きかったのかもしれません。
実は僕は子どものころ、家庭で寂しい思いをすることが少なくなかった。それがバネになった部分も大きかったのではないかと思うんです」辛い思いをすると、思いが胸にたまり、いつか爆発する。それが夢に向かうための行動力になったのだといいます。
恵まれた環境にあることが、本当の幸せかどうかはわからない。満たされていれば、自分から何かを求めることなく満足できてしまいますから。
人は何か足りないからこそ、それをつかむために頑張れるのかもしれません」それでも、「子どもたちに自分と同じような寂しい思いは絶対にさせたくない」という高橋さん。
現在は俳優としてテレビや舞台に忙しい毎日ですが、家族を何より大切にしています。
- ■ 子育ての基本は夫婦のコミュニケーション
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高橋さんの子育て方針は、まず夫婦ありき。
「子どもをしっかり育てるには、まずは僕が妻とよい関係を保つことが前提。
だから、妻とのコミュニケーションを大事にしていますね」
俳優の仕事は何カ月もロケで家を留守にすることがある一方で、まとまった休みもとれるので、家にいる間はしっかり家族と向き合うようにしているといいます。「たとえば僕が家事をするとたった一日でも大変。
これを毎日一人でやっている妻はすごいと思いますよ。それから子ども2人が軽症のアトピーなのですが、妻は子ども自身が持つ生命力を信じている」ところがあって、動揺しない。妻から学ぶことは多いですね」
アトピーだからといって特別扱いしないことが夫婦の共通意見親が神経質になりすぎると、子どもが気にしてしまうからと、通院治療以外はあくまで普通に接しているといいます。「子どもを守ってあげすぎるのは良くないと思うんです。アトピーだからといって、外で泥遊びをするな、虫に触るな、とは言いたくない。
子どもは遊ぶことが仕事なんだから、外で元気いっぱい体を動かすことが大事。ケンカして悔しい思いをすることも、自分より大きい子に、かなわないなと思うことも、大事なことでしょう?」
自然の中で目一杯遊ばせることで、子どもの中から「あれもしたい、これもしたい」という気持ちが沸いてくる――そうやって積極性を引き出すことが、子どものバイタリティーを高め、自分の体と向き合って病気と闘う力につながるのではないか、高橋さんはそう考えています。
- ■ 子どもを育てながら、自分も成長する
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『ナーバス・サーカス危機一髪』(マローネ・レコード)
2,500円(税込)
高橋さんがボーカル、トランペット、ギターのほか、作詞・作曲にも参加。
さまざまなジャンルを飲み込むようなセッションライブ的アルバム。ファンにはたまらないCDです。
子育てを通じて自分自身も成長し、仕事への取り組み方も変わったといいます。「子どもは自分の理想通りに育つわけではない。つい怒ってしまうこともあるけれど、親の思い通りにいかないのが当たり前。短気な自分を反省したりしますよ。子どもは親をよく見ていますしね。子どもを育てていると、自分の負の部分を見つめるようになりますね。
仕事でも、他の人を見る目が優しくなったように思います」アイドル時代は何より目立つことが第一だったそうですが、今は画面にどう映りたいかより、「スタッフや共演者と一緒にどう作品を作るか」や「今日一日をいかに生きたか」のほうが大事に思えるようになってきたといいます。
「俳優は特別な存在ではなく、一つの職業。そうシンプルに考えられるようになってきました。僕は画面の中央にいても脇にいても、いい仕事をしている役者だな、と思われたい。どんな役を演じても、見られているのは『高橋和也』という自分自身。だから毎日を精一杯生きていきたいですね」
大切だと思うものを大切にできる力――高橋さんのまっすぐ前を見据える力強い眼差しから、そんな力が感じられました。